正統なるあの頃の冒険小説!

江戸川乱歩の『電人M』か『怪盗二十面相』か。はたまた『名探偵ホームズ』や『怪盗ルパン』といった、小学生の頃にポプラ社の児童書を読み漁っていた私には当時のワクワク感がよみがえってきました。
しかも合気道の達人vs透明人間というぶっ飛んだ対決! もう大人向けだか子供向けだか分からない梧桐ワールドに引き込まれてしまいます。

もちろんクライマックスは最初から怪物との対決シーンだと分かってはいるものの、そこへ至るまでの展開も上手い。書簡体小説なのに徐々に勢いを増す筆力! アクションシーンではハラハラドキドキ(ポプラ風表記)で読む手が止まりません。達人が窮地に割って入る登場シーンには格好良過ぎて痺れました。何度も言いますが、これ書簡体小説なんですよね。

また飄々とした塩田剛三の人柄も史実をよく調べておられます。格闘技ファン(私は詳しくないのですが)なら誰もがニヤリとしてしまうラスト。かつて冒険小説の虜になった大人達にもお勧めできる作品です。