魅力にあふれた作品です

 読み進めていく内に面白さを増す物語でした。
 実は互いに意識し合っているのに、『お兄ちゃん』と『妹』というフィルターがかかっているせいで、関係性が止まった二人。そんな彼らがとあることがきっかけで接近し、関係性が動き出す。まさしくドラマですよね。
 今作は最初に紗菜子視点が描かれ、後で忍視点で裏側を埋めていく形となります。その過程で忍の掘り下げがあり、どんどん深みを増していきました。
 舞台は現代で、別に派手な展開とかありません。事件とか戦いとか(ある意味、過去に事件は起きているけれど)。それでも、この作品はどこかドラマチックです。とにかく絵になる描写がされているのです。
 街の描き方もそうですね。未来には閉まっているであろう商店街だとか。あるあるといった雰囲気で。そこがしみじみとした空気感で、だけど生き生きともしている。登場人物たちも人間的な魅力がありました。もっとこの街にいるキャラが動く様を見ていきたいです。
 正直、現代ドラマって苦手なんですけど、登場人物や人間ドラマに魅力があるとなかなかに楽しめるんだなと、感じました。

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