メンヘラの男性遍歴・はじめての彼氏編【2】

 めでたく、メンヘラさえこと幼馴染君は同じ中学校を卒業。高校は別でした。彼は機械の勉強ができる高校に。私は有名進学校の女子高に。

 私は高校受験をきっかけに精神科通いになってました。ノイローゼって診断だったかな。めでたくサクラが咲いてからしばらく元気だったけど5〜6月頃に再びポッキリ折れちゃいまして。そこから先は高校卒業までとにかくもがき進む毎日でした。

 すまないけど、高校生活について具体的なエピソードはよく覚えてない。学校に行って保健室で過ごして時々這うみたいに授業を受けて、なんとか自習を進めて塾にも行ってって過ごしてました。いつのまにか別の診断名もついてた。


 彼氏は彼氏で、ものづくり系の部活に入って青春してました。日付が変わるまで学校にいて何か作ってたらしい。平日も休日も部活部活部活でまともに連絡が取れなくなって、半年間放ったらかしだったこともありました。今日は1年ぶりのデート! ってこともあったな。たしか。

 そこまでは「忙しいから」で済むからよかった。もちろんめっちゃ寂しいけど。だけど、そのデートの途中でなぜか、友達との約束って言って夏まつりに行こうとするし。アニメを見る時間はあったはずなのに、全然会えないし電話もできないしメールも返ってこない。よく覚えてないけど、不満は徐々に募ってたのかなぁと思う。


 それでも、高校生の頃はまだ別れたいと思わなかったです。私自身にも、彼氏に気をかける余裕がなかった。なんだかんだ言って、私から彼に迷惑かけても別れなかったしね。号泣しながら電話したら出て黙って話を聞いてくれたし、精神疾患のカミングアウトもしっかり聞いてくれた。「病気になったくらいで別れるつもりはない」って言われたのは嬉しかったなぁ。「メンヘラは嫌われる。好きになる男なんて誰もいない。元々好きでも嫌いになるに決まってる」って思ってたから。


 さらなる転機がきたきっかけが、私の大学進学。

 大学受験に失敗した私は、自分の学力と比べて随分偏差値の低い、滑り止めの大学に入学しました。大学での講義や課題はかなり簡単で、量も少ない。病気は治ってないけど、高校時代に比べてストレスは格段に減ってました。周りに私より勉強できる奴いないもの。私がナンバーワンだワッハッハー。実際は自主休講多かったしナンバーワンじゃなかったけどな! はっはっはクズめ!!

 ちなみに彼氏は就職しました。相変わらず連絡はこなかった。携帯が持ち込めない職場だったらしいから、仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。


 進学をきっかけに時間と余裕ができた私はネットや創作にはまり込んでいくわけですが、そこである男性に出会った。ネット経由で知り合った専門学校生。ひとつ年上で不良っぽいナルシストでした。人生経験が豊富に見えたんです。勉強と習い事と創作以外に特に何もやってなかった私にとっては。家庭環境が複雑らしいし性経験あるし、自分の容姿にコンプレックスがあるっぽいけど卑屈にならずに開き直れる(ように見えた)し、自分でカクテル作れるしマルチリンガルな才女とお付き合いしたことあるらしいし。

 自分に知らないこと語ってるから、頭が良く見えたんです。マルチリンガルな才女は今考えたら怪しかったな。お勉強できるのが自慢な私を、無力化するための嘘だったのかなーと。「俺は過去にこんな子と付き合ったことあるから、あの子と比べてお前が大したことないって知ってるよ、だから大したことないお前は、俺様に逆らうなよ」って感じで。おめー才女じゃないだろ。

「俺、カクテル作れるよ」とか「腰使いがいいって言われるんだよね」とか言ってました。うわあぁあぁ思い出すと殴りたくなってきたな! ドヤァってしてんじゃねーよ気持ち悪い! てかやっぱ、悪口は捗るな! カクテル野郎でいいや、この人の名前!

 人生経験もそうだけど、さらにグッと来てたのが、めっちゃグイグイくるところ。好きとか愛してるとか人間性に惚れたとか、そういう甘ーい言葉を恥ずかしがらずに口にする人が新鮮だった。とんだナルシストじゃねーかカクテル野郎。だけど、ストレートな表現に安心はできました。私のことが本当に好きだって、誤解なく受け取れますからね。

 あと、声は結構かっこよかったな。あの声で「淫乱女」って言われたらドキドキしちゃった。あ、これは彼氏と別れた後の話ね。さすがに二股は嫌。

 カクテル野郎には「実際に会ってから恋人として付き合うかは決めたい」って伝えてました。ネット上で知り合った人だから顔も知らないし、声と文字だけじゃ雰囲気も伝わらないし。

 それに、彼の人間性がたまに心配になることもあったんです。屋外でスマホにイヤホンつけてスカイプしてたら近くに集団下校の小学生がいまして。その声が向こうに伝わった時「そいつら車に轢かれねーかなー。俺、うるさい子供は嫌いなんだ」って言ってたんです。あとはよく覚えてない。だけど「なんとなく不安」な気分は時々してた。私はその気分無視してたけど。だって、構ってくれるんだもん♡ うえ。

 あと、ドキドキする(メンヘラじゃない人なら、不安になるって言うかも)とM性がくすぐられた。口汚ない奴とか束縛してくる奴とか、振り回してくる奴とかの隣にいると、リードしてもらってる気分になってときめいちゃうんです。モラハラ野郎に引っかかりやすいんですよ、さえこさん。もう一度同じ失敗してます。2回目も全然気づかなかった。恋愛遍歴編の終わり頃に書くと思う。多分。


 あとは多分、読者の皆さんお察しの通りです。危険信号をトキメキと間違えて脳内がドーパミンでパッパラパーになったさえこさんは、幼馴染君と別れてカクテル野郎に乗り換えようとしました。

 別れる前に話し合おうとメールしたら幼馴染君、返信せずに温泉かどこかにドライブ行ってまして。私がそれにキレて電話して、「おめーこれで何度目だよ! あなたにとって私は何なの!」って感じでギャーギャーわめいて「私はあなたのこと、人間としては好きだけど男としては無理です」なんて結構ひどいこと言って電話をブチっと切って破局。9年続いたのに、最後はあっけなかった。さすがに男として無理は言いすぎました。幼馴染君ごめんなさい。そして言い訳がましくてごめんなさい世界。

 幼馴染君を貶めて美化してるだろ私。お前は浮気して彼氏を裏切って別れたんだよメンヘラさえこ。でも幼馴染君にも怒りたい。だけど私が怒るのは気分が良くない。別れたきっかけは私が作った。私が悪いんですもの。

 アーもう、こんなウダウダしてるからああいうモラハラ野郎に引っかかるんだろうな。


 そのあと、カクテル野郎とは付き合い出す前にお別れしました。私のこと、なじり始めたから。「嫌だから。ムカついたから。あいつと付き合いたくなくなったから」というより「このまま付き合いが続くと長い目で見て損だ」って考えてお別れした。気持ちが保たないなと。

 あ、お別れするときのカクテル野郎はすごかったですよ。「どう責任とってくれるんだ!」「金か? 金があれば満足なんだろオイ!」ってスカイプでめちゃくちゃ言ってましたね。

 でもその時は怖かった。「会いに来るためにお金貯めてたらしいし、弁護士雇って裁判起こしてくるんじゃ」って思ったな。もちろんスカイプはブロックして電話は着拒、メールアドレスは変えました。自宅の住所と電話番号を教えてなくて本当によかった。


 ちなみに幼馴染君とは一度復縁しますが、しばらくしてまた別れました。しばらくは連絡くれたんだけど、また来なくなった。キリがありませんもん。その時も、最終的に引導を渡したのは私でした。

 引導を渡したなんてカッコつけて言ってますけど、私が多情だから別れたんだよな。なんか後ろめたいや。いや、構ってちゃんじゃなくても別れたのかな。どっちが悪いわけじゃないのか?  そういえば「人間関係は相互の性格や資質でなく、続けていこうとする努力が繋いでいく。努力の末に別れることもある」的なことが書いてあったな、アダルトチルドレンの本に。うまく答え出せないや。


 恋愛遍歴編、まだまだ続くよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る