メンヘラの男性遍歴・泥沼の片思い編【3】
黒縁君と知り合ったのは例の黄金期。当初からなんとなく惹かれる存在ではありましたが、結局は先輩君と付き合い始めました。フリーになってからまた黒縁君が気になり始めて、それから前述の泥沼が始まります。
告白はしました。たしか、フリーになってから2ヶ月後くらいのことです。知人に相談をしたところ「そんなに気になるなら、告白して玉砕してくればいい」とアドバイスを頂きまして。だけど、当たって砕けてくるって感覚はあまりなかった。なぜかというと、私にとっては告白って「私はあなたの、恋人になれるか、なれないか?」の確認作業だと思ってたから。
どういうことか説明しようと思う。
恋人と友達って「愛着のあるかけがえのない人」ってところで共通してますよね。事実、お互い大差ないと思ってたんですよ、恋人も友達も。少なくとも前は。今は訳が分からなくなってるけど。
で、恋人と友達の何が違うのかというと「特別度」と「(感情のこもった)性が絡むか否か」です。
まず前者の特別度。恋人は一般的に、2人も3人もいません。1人につき1人です。一夫多妻の時代や地域ならまだしも、現代日本じゃ恋人が5人もいる人は5人から殴られても文句言えません。だけど友達はもっとたくさんいても変じゃない。
例えば、さえこさんが太郎君の友達なら太郎君の周りにいる親しい人々の中の1人だけども、恋人ならオンリーワン。その他大勢の友達やクラスメイト、仕事仲間を差し置いて、私は彼の特別の中の特別になれます。私は黒縁君にとっての特別になりたかった。
そして後者の、性が絡むか否か。私、処女なので全然詳しくありませんが、基本性行為をする相手って恋人じゃん。友達のおっぱい触ったりお尻揉んだり、セックスしたりしないじゃん。恋人じゃない相手となら、感情絡めないじゃん。ヤりたいだけじゃん、多分。
友達とセックスしない理由、うまく説明できないけど、なんかしないじゃん。しない理由は特にない気もするけど、友達相手にそんなことしたら、友情保つの難しそうじゃん。うん。深く考えずにセックスして安全なのは恋人だけ。相手が彼氏彼女なら、胸をはってセックスできるじゃん、ね、うん。よくわからん。
あ、そうだ、異性の友達と手を繋いで歩いたりしないよね。そう考えればいいのかな。手を繋いだりキスしたりできるって、特別感ある。私は黒縁君が手を繋げるオンリーワンの女性でいたかったんですよ。
何が言いたいかというと。
私が思う告白っていうのは、相手にとってのオンリーワンになれるか否かの確認作業なんです。断られたら、それは「君は俺の特別にはなれない」ってこと。特別になれないなら、今まで通りその他大勢でいればいい。私はそう捉えてるし、告白を受けた時も断る意味ってそういうことだと思ってた。だから、別れた後の先輩君とお友達続けられたんです。
これを女友達に話したら「一般的な考えではない」って言われたけど、当時は皆こう考えてるんだと思ってた。
多分「一般的な考え」の人たちは、彼氏や彼女、好きな異性は、友達と両立しえない全く別のものと捉えてるんですよね。ある人を好きになったり恋人同士になったりしたら、それまであった友達や仕事仲間やクラスメイトのその人が跡形もなく消えて、彼氏・彼女・好きな人に変わると考えてる。のかなぁ。
私は、彼氏も好きな人も、友達etc.の頭の上に、彼氏や好きな人って書かれた旗が刺さってるものだと思ってます。お子様ランチの旗みたいなやつ。男友達が彼氏になったら、友達ではなくなるんじゃなくて、彼氏印の旗が刺さった友達になるんです。
ただその旗印はお子様ランチの旗と違って、友達etc.って土台に多大な影響を与えます。だから一度刺さった旗を穏やかに引き抜くのは難しい。ランチのご飯に刺さった旗を引き抜いたら、ご飯がバラバラに崩れちゃうようなもの。だから、別れた後の彼氏彼女は付き合いを続けるのが難しいことが多いんです。
この点、幼馴染君は難しかった。何しろ、10年近く、お互いが彼氏彼女だったから。旗が深く根をはりすぎて、引き抜いた瞬間土台も崩れてなくなっちゃった。彼氏と彼女以外の関係にシフトできなかったんですね。
さて、話を戻します。
私は結局、黒縁君に告白して丁重にフラれました。「俺は人を好きになるのができないから、さえこさんの彼氏にはなれない」って言われて。彼の特別な人にはなれないってわかったんですね。それなら今まで通り友達でいようと思った。だけど、黒縁君の考えは違ったみたいです。
今まで通り友達として付き合おうとすると、黒縁君、避けます。話を早く切り上げたり、遊びに誘うと「忙しいから会いたくない」とか「用事がある」とか言って断る。金欠なこともあったな。いくら人の感情に鈍感な私でも、黒縁君が離れていってしまうとは感じました。
逃げる彼を見て、何がいけなかったか考えます。当然ですよね。さえこと友達なのが嫌なら、告白した後の私に何か問題があるんだから。告白する前は仲良しだったんだから。
それに「お前なんて嫌いだ、会いたくない」とは言われないんだから、まだなんとかなると思ってましたし。本当に嫌なら言うだろうし。少なくとも私ならそうする。
もしガチでさえこさんが嫌いで友達として付き合うのも御免なら、先のことを考えてキッパリ断った方がいい。お前なんか嫌いだって言えばいいんですよ。少なくとも、曖昧なままにしておくよりもずっといい。黒縁君は頭がいいし、それくらいわかると思った。だから、気持ちが彼の中で明確になってるなら彼が自発的に拒絶するだろうと。
彼に好かれるために、それまで自分の価値を落としていってた私がどうなったか、想像に難くないと思います。
私はそれからさらに、隣にいる彼が無条件で偉くなれるような悲惨な人間になっていきました。暗くてつまらなくて、お勉強しかできないさえこさんに逆戻りです。お家芸だったお勉強もアピールしなくなりましたね。どうせこれしか取り柄がないから〜とは言ったかもしれないけど。
こうやっても黒縁君、逃げます。必死ですがりつくのを繰り返すと、判断力や精神状態もおかしくなっていく。急にキレたり泣き出したり、酒に酔って支離滅裂なメールしたり、それが返ってこないから、知りたい点を箇条書きにしてまとめた、内容が意味不明な質問メールを送ったり、気をひくために(今思えば)セクハラめいたことを言ってみたり。
こうして迷惑かけた点においては、黒縁君に謝りたいです。本当にごめん。周りの人たちもごめんなさい。傍迷惑でした。おかしかったです。普通じゃなかった。
数ヶ月これを続けるうちに、とうとう黒縁君がキレました。休日に遊びに誘ったら「はっきり言ってしつこい。玉の休日を邪魔するな」と。
やっと明確に表してくれた拒絶にさえイラっときたけど、距離を置くことにしました。この頃にはさすがに私も、自分が普通じゃないことに気づいてましたから。それから大体1年弱かな。自分から会わないし話さないし関わらない。そういう期間をとりました。
その間、彼が付き合いでカラオケに行ったり飲みに行ったりって話を聞くたび、妬ましくて頭がおかしくなりそうだったけどね。その付き合いの集団、過半数が女の子だったので。なんで私が会えなくて、あの子らが黒縁君と一緒にお酒を飲めるんだと。ニコッと笑ったところ、可愛いんですよ、彼。なんで私が見られなくて、あの子たちは見れるんだと。
それで一年耐えて、あるタイミングで満を持して会う約束をしました。一緒に飲みに行かないかと。友達に戻るため、話し合うのが目的です。面倒だと思われたらまた逃げるから、それは明かしてなかったけど。一年耐えて頭を冷やしたはずなのに、私もヤケになっていた。友達に戻れないと本当に私、黒縁君に敗北したことになる。
黒縁君に掛け合ったら、意外と快くオッケーをもらえました。それから言い出しっぺの私が店を選んで予約して、レッツ話し合いです。彼にお酒のある店で平気だと言ってもらえたから、カクテルメニューが豊富なお店に行きました。カクテル好きなんですよ、さえこさん。へへ。黒縁君が好きな種類のお酒もあったしね。
お互いに意地をはると本音で話せないし、友達に戻れない。だからアルコール入れたかったっていうのが、本来の理由なんだけど。黒縁君が私を含めて他人を拒絶するのは、彼自身を守るためだと思ってたから。私は黒縁君に(友達として)大事にしてもらえると思ってたんです。これがやっぱり、ストーカーの心理なんでしょうかね。馬鹿じゃないの。社会の害悪だから早く死ねばいいのにメンヘラさえこ。
結果、狙い通りに黒縁君の本音が聞けました。彼は私のこと、最初から大事な友達とも思ってなかったみたい。いや、違う。黒縁君だって私のこと、友達だとは思ってました。そもそも友達って何かっていう、考え方が違った。
彼にとって友達とは、利用するための存在なんだそうです。人間関係のハブに使ったり、勉強を教えてもらったり。そう説明をもらいました。さえこさんは、お勉強ができるから役に立つと思ったそうです。だけど思ったよりも役に立たなかった、と黒縁君。お前に執着されると迷惑だと言われちゃった。
ショックは時間差できました。私は言われたことの意味がわからなかったから、本音だとまた思ってなかったし、ピンとこなかったんですよ。なんか不快だけどよくわからないから保留、的な。
女友達にその話をしたら、その友達の方が滅茶苦茶怒ってました。友人たちに話してるうちに私も悲しくなってきた。ありがとう友達。やっと悲しい理由がわかった。悲しい気分は比較的すぐに消えて、怒りに変わって、それからしばらくして今に至ります。
気持ちの整理が簡単につくはずはないんだけど、とりあえず今は「黒縁君は彼自身が嫌な目に合わないと学習しない。だから私は、学習するチャンスは与えない。やり直しが難しい年になってから大失敗して苦しめばいい」って考えることにしてます。そう思っていれば私、あんまり変な行動しない。
今は黒縁君と表向き同級生として当たり障りなく付き合ってる(はずだ)けど、何事もなかったみたいに毎日を過ごす彼を見てると不幸を願いたくなりますね。彼は人前では私との友達付き合い、最初からなかった風に接してます。キツい思いをしたのは私だけ。失ったものがあるのは私だけです。
しかも黒縁君が憎らしくなっても、私は嫌味を言ったり憎まれ口を叩いたり愚痴を言ったりもできない。彼が私と何があったか吹聴すれば、私の逆恨みってことになっちゃう。これからさき腹の立つ言動を彼から受けたとしても、なかなか怒れない。
黒縁君は今、学科の仲間からも好かれてます。前まで人付き合いは希薄だったけど、彼も研究室に配属されたら付き合わないわけにもいきません。
彼が他人と関わってるところを見てわかったけど、あの人、人に合わせて不可なくコミュニケーションするのがとても上手いんです。人に合わせて趣味や意見を変えたり話すノリを変えたりを、不自然なくできる。今まで見てなかったからわからなかった。彼とは気が合うなーと思うのも当たり前ですね、だって私に合わせてたんだもん、あの人から。
私は人に合わせる黒縁君を見て「前はそんなこと言ってなかったのに!」ってイライラする。嘘つきじゃないですか。公衆に知らしめてやりたい。今すぐ学科中から嫌われればいいのに!
だけど無理ですよ、赤の他人が知れば私の逆恨みなんだもん。今は周り、男性が多いから、共感が得られないのはなおさらです。
そう考えたらアルコールのある店を選んだのもまずかったなと。それを黒縁君が漏らしたら私が彼とヤろうとしたって話になりかねない。おそらく実際に黒縁君も、そう勘違いしてるところありますよ。
なんですか、もー結局黒縁君、自分のことしか守ってないじゃないですか。心も体面も傷ついてないのは、丁寧にお断りして、しつこくつきまとう女を常識的な反応で避け続けた黒縁君だけ。悪いのは社交辞令を察せなかったメンヘラさえこです。私はしんどいのはもちろん、どの人を信じればいいのか益々訳が分からなくなったのに。本当に上手に立ち回ったな、黒縁君。嫌味じゃなく、ほんとに世渡りのセンスあると思う。
これからも彼は、上手に生きていくんだと思います。最低限仕事ができる頭があって、コミュ力があって世渡り上手なんだもん。研究室のボスのコネでいい企業に入社して、上手に居場所を築いて、偉い人に気に入られて、出世していくんじゃないかなと思う。人を顧みないし家庭を築くかどうかは微妙だけど、重役のお嬢さんとかと結婚してるかも。
周りで見てる人は、成功者黒縁君に拍手を送るでしょうね。彼が歩いた道筋に重病人や怪我人や死体が転がってても、見えなければいないのと同じです。見えるものが全てなんだから。たとえ見えたとしても、死体が悪いヤツのものってことにすればいい。黒縁君なら、そう説明するのもできると思う。
……と考えるのも、異性としても友達としても受け入れられなかった、私の逆恨みなのかな、やっぱり。これまで受け入れられようと必死だったのに、拒絶されたら180度変わっちゃったもんな。それとも、今まで嫌なこと言われても感じてなかった怒りを、今頃になって味わってる?
うーん、怒るのは間違ってるのかな。他人が見れば逆恨みだし。怒ってますもん私。頭で考えたとしてもバイアスかかってますもん。自分では誰が悪いか判断できませんよ。悪いのは私? いや、どうなんだろう。そもそも黒縁君が先に「お前とは友達でいたくない」って言えばよかったじゃないか。なんで言わなかった? まだ何か利用する狙いがあった? ハッキリしたNOサインは出さなかった? 先延ばしにしてた? 彼は自分に対して甘かった? モヤモヤする。ハッキリしたい。アーまたしんどい。アーーーーー!!!
ってことで、これで恋愛遍歴編はおしまい。恋愛のこと書いてると筆が進むけど、とても気分が滅入る。せいかつにえいきょうがでる〜〜〜〜。許してください。何かあるたびに迷惑かけてばっかりでごめんなさい。許して。
さて、また次回からは気になることや憎らしいことなどをのんびり語っていきます。また付き合ってくださると幸いです。
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