読む者に変容を促す小説、あるいはプロの犯行(絶賛)。

どこかで聞いたような、聞きたいようなお話が絶対的危機にある主人公に囁かれます。
(死にかけの主人公にはどうでも良い話ばかり)
倒れた主人公の周りを何の悪意もない子犬のようにぐるぐると話が回っていく。

しかし、わたしはそれら小断片の物語いずれかに琴線に触れるなにかを発見してしまう。

やがて気がつけばウイルスに感染し、奴らの遺伝情報を増やす機械になりはてている。

感動や衝撃、意外な展開で人の心を変えるような小説ではない。どのみちそいつらは一過性だ。

しかしこの小説は読了後、わたしはこれまでとは違った何かを再生産し始める。

「物語の原点」に繋がる何か。

繰り返し繰り返し読みたくなる。ああ、これで何回目だろう。

そのたびに生まれ紡ぎ出される何かはわたしを変えていく。

そして今日もわたしはこの小説を読んで犬。

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