パンツの一言で狂った世界、戦う少女

 空飛ぶパンツが人々を襲う世界、それと戦う少女たちがいた。
 
 パンツ……じゃなくてワンフレーズで描き切ってしまうにはもったいない頭のおかしさですが、実際その一言を元に現実との相違を見事に肉付けしていて、大真面目、かつナチュラルに狂った世界を描き出しています。
 言葉遊びと言うか、現実の言葉や事物……なんでしょうが、カバン語というか二重の意味を持たせてツッコミどころとする手法が冴え渡り、日本語の神髄を見た気がしました。
 
 よくぞパンツからこうも説得力のある世界を生み出されました。
 実際、作中でも度々触れられていますが根源的(プリミティブ)なものをパンツに見出してしまうのは全く不自然ではありませんから。

 姉をパンツに奪われた主人公が平然と、いや疑問を抱きながらも不条理な現実に挑むそこに憤り、焦り、怒り、様々な感情を想起させ、共感させます。
 戦い、傷つく女の子たちの痛々しさはホンモノで、読者として世界観やナチュラルに挟まれる小ネタに対し自然と笑みは浮かぶのですが、戦いに茶化しは無粋と思わせ、追体験させる筆力が素晴らしい。
 
 私はパンツと戦ったことはありませんが、実際こういった非常時にはかくあるべしという心構え、教本として職場に配りたい、そう思うほどにリアルな心情、筆致は素早くに目を躍らせます。
 読みやすく、奥深い。映像が脳裏に浮かぶ、お約束の展開もそうと感じさせずむしろ王道、ワンダフル!
 

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