ごたごた短編集

先に。
一話読んで合えば、氏のどの掌編集を手に取っても楽しめます。

どれにレビューを書いて推すか迷っていたのですが……あらためて自分が最初に手に取った、且つ一番バリエーションに富んでいるこれを。
不思議で、おそろしく、くすっとする。時に投げっぱなしであざと過ぎない。独特な距離感が心地よく。かと思えば「恋人たち」収録の、しっとりとしたお話も抜かりが無くて。

掌編好きでしたら、是非本棚へ添えてくださいませ。

ごたごた短編集とあるが、様々なタイプの作品が集まっているという意味だろう。
確かに、とても文学的な香りの強いものから娯楽性の高い楽しいものまで、色々な短編があった。
「恋人たち（恋愛の話）」「過去の作品」「新しい作品」の3部に分かれていて、私が1番気に入ったのは、「恋人たち（恋愛の話）」の中の最後を飾る『流離』である。
かなり完成度の高い作品で、私はてっきりこれはきっと本当の話だろうと思い込んでしまった。しかしさてさて、どこまで本当なのか、それは読者様が読んでみてからのお楽しみということで。
皆短いので、気楽に、空き時間に読める短編集だ。

一つ一つの話が、まるで音楽のよう。
個性的な曲が合わさって、それが一つの作品になっている感じ。
芸術性では群を抜いていると思います。
読んでいて、なんだか素敵な気分になりました。
文章は技巧的ではあるが少々読むときに躓きます。
さらさらと読むタイプではなく、じっくりと鑑賞するタイプの作品だと思います。