異世界モノが多すぎる

草野原々

異世界転移したけど千文字しかなかった

 主人公は異世界に転移した。彼の名前、年齢、職業、顔かたちなどの個人情報をここでダラダラ書いている時間はない。なにしろ、この世界に入る情報量は千文字が限度なのだから。情報量が千文字を超えると重力によりこの世界は潰れてしまう。

「ところでこの世界は魔王に支配しされています、千文字を超える前に倒してください」

 主人公を召還した美少女は懇願した。とてつもない美少女であり、本来ならメガバイト級の文章を綴っても満足できないほどだが、あいにくと紙幅に余裕はなくとてつもなくかわいかったと書くしかない、髪の色はピンクだ。

 主人公は一般人であるためわたしには一般的な力しかありませんと主張し、戦いを拒否しようとするが、美少女はあなたを勇者として召還したと主張して譲らない。そこにちょうどよく出現するのは凶悪なゴブリンである。

「うっへっへー、美少女を襲います」

 ゴブリンは暴力的に美少女を攻撃する。このままでは十八禁になってしまうため、主人公は己の身を省みずに立ち向かう。主人公の感情の高まりに呼応して奇跡が起きる。美少女が持っていた家宝の宝石が光って主人公がパワーアップ、超自然的なビームを出してゴブリンを蹴散らすのだ。

「ありがとうございます、しかしもはや五百字を過ぎました。早く魔王を倒せ」

 文字数短縮のために命令形だ。私も文字数を短縮しなければ。

 次に主人公は町に行き王様に会うが勇者候補である女剣士と身体を接触させてしまい決闘申し込まれるが勝つのだ。

「アタシもあんたの仲間になるよ」

「「しかしあなたがたはここで死ぬのです!」」

 四天王が登場だ。文字数が少ないのでわざわざ町まで来たが主人公のビームにより倒される。

「まだ三百字もある、ゆっくりと食事をしよう」

 主人公の提案により、ゆっくりと食事をする。まだ三百字もあるなら余裕だろう。三百字といえばツイッター二回分以上である。そのスペースを利用しておいしい料理の描写をしよう、良い料理の描写ができる作家は良い文章を描く作家だというからな。主人公一行が食べているのは小鳥の丸焼きであり、ところどころ焦げ付きながらも良い色ぐあい、肉汁が適度に染み出ており、噛むととろけるような

「おいまてわしが魔王だ終わってしまうぞ」

 千字を超えてしまう頑張れ主人公たち!

「アタシは雑魚を倒すぜここは任せた!」

「わたしは家宝でサポートします」

「謎のビーム!」

 魔王を倒し世界は終わってしまったのだった。

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