異世界転移したけどマンホールの蓋が外せたのでチートできた
ひゃははははははははは! また、マンホールの蓋を外してやったぜ!
マンホールの蓋を外すのは面白くてたまらない。俺は三歳のころからこの趣味を続けている。いまでは、小指で端を撫でただけでマンホールが飛び出す始末だ。
もちろん、警察も黙っていない。捜査本部を立てて俺を追っている。謎のマンホールの蓋外し怪人として、連日新聞やテレビも大騒動だ。まあ、俺を捕まえられるはずはないけどな。
今日もパトカーが三台とヘリが一機、俺を追っている。こっちは自転車だ。スピードでなら勝ち目はないが、こっちには技術がある。
どどーん! ばばばーん! パトカーが爆発する。蓋の外れたマンホールの穴にタイヤが落ちたのだ。三台のパトカーは大破。マンホールから出た下水でがヘリに直撃し、落下する。
それまではよかったんだがな。ヘリが落ちてきた位置が問題だ。俺の頭上に落ちて爆発しやがったんだ。
いくらマンホールの蓋を外すのが得意でも、ヘリと衝突して無事なはずはない。回転するプロペラがスパパパパパパパパパパと俺の肉体を切り裂く。ベーコンみたいな姿になっちまった。
ところがどっこい。なんと、次の瞬間、俺は異世界にいたんだ。ネット小説みたいな話だが本当だぜ。
異世界では、とてつもなく悪そうな人相をした男たちが美女をいじめていた。男たちは山賊で、美女のほうはお姫様だと俺は直感したな。根拠はないがな。
当然、俺はお姫様を助けようとしたわけさ。だが、こっちは徒手空拳だ。山賊のほうは、刀やボウガンやこん棒をたんまりと持っている。かなうわけない、ここは見ざる聞かざる言わざるを通そうと、口笛して通り過ぎようとした。
そのとき、道端にマンホールがあったんだ。
不思議なマンホールだった。いままで見たこともない図柄だ。カラフルな色合いとしていて、それでいてどことなくはかない。一級の芸術品だ。
俺はマンホールの蓋を外して手に取った。ほれぼれとみているうちに、山賊は穴に落ちて全滅していた。
「おお! 勇者よ!」
美女が話しかけてきた。
「わたくしの王国は、いま、崩壊の危機にあります。魔王に脅かされているのです。そのマンホールの蓋を外したということは、伝説の勇者さまなのでしょう。どうか魔王をお倒し下さい」
「ははははは! そのとおり、俺が魔王だ! どれ、勇者というやつの力はどの程度なのぐふっ!」
マンホールの穴から魔王が出てきたが、俺が持つ蓋の角に頭をぶつけて死んでしまった。
「おお! さすがは勇者様! 魔王を倒したとは! なんなりと、お望みを申し付けください!」
「うーんと、そうだな……」
そうして、俺はマンホール省を設立して、マンホール大臣として今日も日々をエンジョイしているってわけさ。
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