異世界転移したけど言葉が通じなかった

 平凡な男子高校生、通弥狗深能つうやくふかのうは七トントラックに轢かれてその生涯を終える。

「いやだ! 死にたくない!」

 彼は願った。その願いが通じたのかどうか分からないが、異世界への扉が瞬間的に出現し、彼の魂を吸い込んでいった。

「おめでとうございます。わたし、スヴァンドフのサプリエンタリーです」

 通弥の目の前には美しい女性がいた。ドレスがヒラヒラして光り輝いている。まるで女神のようだ。

「あなたは、バリートロポンサー、ゆえにランパッパ、ピリンワルポをあげる」

「ちょっと待ってください、よくわかんないです」

 英語かと思ったが、どんなに頭を絞ってもそのような英単語は出てこない。

「ソルドバッハ、日本語は難しい、あなたに言いたいのは、レワルォホをあげるということ」

「レワルォホとはいったい……?」

「レワルォホとは、ィチィラザイダー?」

「なんですか! それ! はっきり喋ってくださいよ!」

 聞きなれない単語が出てくると誰でも腹が立つものだ。通弥は思わず声を荒げた。

 女神のほうも、負けず劣らず困惑しているようだ。

「ィチィラザイダーとは、ファンゴドをトビトデンサし、トビトデンサをバマンデモンシ、つまり、ファファオオモ」

 通弥はため息をついた。この調子だといつまで経っても終わらないだろう。さっきトラックに轢かれたことと女神が現れたことから推論するに、異世界に転移するということだけは確実だ。おそらく、女神はなんらかのチートスキルをくれるのだろう。

「分かった。分かったよ。なんかスキルをくれるんだろ。ありがたくもらっとくよ」

「ロポポ・メシーマファ」

 女神は通弥の頭に手を当てた。身体中にエネルギーが満ちていくような気分になる。これで、スキルを手に入れて異世界最強だ。

「待て! このスキルはどうやったら使えるんだよ!」

「ウォシッシシ・エペペペペペペ」

 通弥の疑問に女神は答えない。答えたかもしれないが、通弥には理解できなかった。彼の視界には光が満ち、意識を失っていった。


「エッペ・トロ・ゴッフ・ツルミヤルカ!」

「ヤハフカロロロロロイウテーンバ!」

 通弥が転移した先は、戦場であった。意味不明な言葉を上げながら、二つの勢力が戦っている。一方は人間であるようで、馬に乗りながら槍や剣や弓矢で戦っている。もう一方はヴァガガドンのようだ。ヴァガガドンとは、ヴァババソンのヴァポポゴンであり、ヴァガガフォンとよく似ているが別物だ。容姿をあげるとすると、コパはスヴァコのようであり、アクエはゴンドエヲ的だ。クォポリミはババンシムな点でそっくりだが、ヴァガガドンのクォポリミはレアレゾンダである。気をつけよう。

 通弥は異世界の情景が日本語に通訳不可能であったことに驚いた。言葉を知らないと、異世界の情景を口にすることすらできない。もちろん、彼は異世界の言葉を知っているわけではないから異世界の情景を理解できなかった。

 通弥を無視して戦闘が続く。ヴァガガドンのロベベはピラクトロウーポだ。ロベベからババランヤがシチャーニする。シチャーニしたババランヤはエンドコフォンとなる! エンドコフォンはサンバラ中のイカエをフットンビラできるパンパリラがある。人間側は不利なようだ。当たり前だ。ピラクトロウーポを人間はシチャーニできないのだ。

「よしっ! ここでスキル使用だ!」

 通弥は叫ぶ。何も起こらない。周囲では相変わらず、ヴァガガドンのロベベからババランヤがシチャーニし、エンドコフォンがイカエをフットンビラしていた。通弥は必死で女神の言葉を思い出そうとした。スキルを発動するキーワードがあるのではないかと踏んだのだ。

「ばてぃーとぽろんざー!」

 何も起こらない。ヴァガガドンはガンバドソンし、人間はイウヤンダザだ。

「ええと……、そるとわっは! れあるっほ! ぃちぃこらいざー!」

 無駄だ。人間はウィバラヌ的にビポビコヴァンザーされ、コランボイゾーとなる。

「てんてれぽんどらー! びびぬ! くわがざんげろんぼびるん! いいふぁーそぉーりぃーずぅー! くかっくからんか! べんべらべんべらべんべらびん! ぬんぱっぱどんぱっぱぺんぱっぱぷんっぱ!」

 こうなりゃ自棄だ。適当に言葉を並べて意味がわからないまま叫ぶ。このなかのどれかがスキルのスペルになるかもしれないという一縷の希望にすがる。炎も稲妻も風も岩も光も闇も何も発動しない。しかし、ヴァガガドンと人間の両者に動きがあった。通弥が叫んだ言葉はヴォポリンコをスナゲッチョし、コォホージッェーとウィスロンエペペをカンバリハンではなくボンガンドリするという意味として解釈されてしまったのだ! これは大変なことだ! 両者は戦闘を一時休戦して通弥をホウリイーパするためにコーピーミーしてくる。

 通弥はコーピーミーされ、トロンボフロンボなテンペトロクルンへとズンバディ。クルンデルリンにインコロンボ、ホウリイーパしインイリーパ。ウンパパパ・ヌンパパパ・グルバロントロン・ヘンミ・クルペロン。ヌ・ズブル・ヘンミ・コランボイゾー・デボボ。ヴァガガドン・ピリン・ヌーパウンバ・イウヤンダザ。エンドコフォン・コンド・ヌベリモンス・イイバラエンドロン。ルンペリラ・カ・トッパヌッパ。

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