愛の変遷　Il Ceppi

音楽の神聖な美しさを文章から滲ませ伝えることに成功している作品でした。
描写力もさることながら、使われる語彙そのものが美しい、どの言葉を使えば音や声を感じさせることができるか心得ているという印象を受けました。
その意味で詩的な作品だと思いました。
特に冒頭のたまたま「天使」の音楽を耳にするところは秀逸です。


物語そのものは単品では見えてこない部分が多いので、姉妹作として上げられているものとセットで読むのがおすすめです。
こちらだけでは見えなかった切なさが鮮やかになっています。

言葉を、散らばった物語を紡ぐように僕は読んでいる。
最初は並べ替え機能でもあれば、出会いから読めるのに、と思ったが…違う…な。
断片的に切り取られた場面を僕は視ているのだ。
これは俯瞰的な視点で時間を無視して過去と未来の時間軸をちょっと覗く感じで読むことをおすすめします。
僕が次に開く物語は…ココより先か、それとも。

『愛の源泉』を、主人公の男性視点で描いた作品。
よって、ヒロイン視点の『愛の源泉』と本作の双方を読むことによって理解が深められます。
ヴェネツィア音楽院という、様々な規律が支配する（？）世界で綴られる、愛の物語。
本作自体は短いですが、恐らくは非常に奥深い設定がバックグラウンドに存在しているのかな思わされる内容でした。
また、愛の源泉での他の方のレビューでもありましたが、音楽の描写力は目を見張るものがあります。何というか、これ以上ないほど美しく、艶かしい表現で読者のインスピレーションを刺激する内容です。
私が出会ったことのない世界の小説。他の作品も拝読したいと思いました。