季節が移ろうたび、人知れず“縁”は紡がれていくという。

物語の構成は、その物語そのものの面白さを最大限に引き出すうえで非常に重要であるといわれる。
ゆえに、冒頭でいかに読者の興味を引くことが出来るか、という部分において工夫を凝らす作家は多いはずだ。
できるだけ無駄を減らし、読者の興味関心を牽引し続けるような展開や構成が用意されていれば、すなわちその作品は優れていると言っても過言ではないくらいに。

では、この作品はどうだろうか。

率直な感想を言えば、私ははじめこの作品を読んだときにある種の冗長さを感じた。
読みやすく上手な文章、しかしそれ以上でも以下でもないという印象のまま、やがて「邂逅ステーション」に辿り着いた。

はっきり言おう。私は読み違いをしていた。
これまで遠回りだと思っていた迂遠な登り坂の途中で、知らず知らずのうちに出会った人々と不意に山頂で再会するような、そんなさり気ない感動がそこにはあった。

この四編の中で、間違いなく秀作は最後の一話である。
ただし、その感想に辿り着くためにはきちんと坂道を登る必要がある。
そうでなければ、山頂からの絶景は見えないだろう。

ところで、山は登れば降りるものである。
私はこんなに復路が楽しみな旅は久しぶりだと、今少しだけ笑みを溢している。