最終節「黄昏のブッシャリオン」直前まで読了。
白毫から放たれるビームによって全人類を強制成仏させようと迫りくる金彩の二足歩行大仏。大仏の群れに囲まれた人類はもはや滅亡寸前であった。だが、成仏し損ねた"不徳者"であるガンジーとクーカイが、人類の敵である"得度兵器"に立ち向かう、というパッケージングがされた書籍版第一巻であったが……。
実は、それ以降の展開は彼らの視点を離れて、クローン聖者である空海達や徳エネルギー技術の専門家『マロ』へ移り、想定していたよりも遥かに高く広い位置から、セカンド徳カリプス寸前の日本列島を見下ろすことになる。
読者の長い旅路が始まった。
いつだって最善手は一歩届かず、人は破れ、仏は砕ける。
一種の迷走にも思える長い長いお遍路の果てに読者が到達した場面は、”人類”も”得度兵器”も”企業”も生存競争の中で「足掻いている」ということであった。
生きとし生けるものは、常に何かに追い立てられている。この世では諸行無常を忘れたものから滅びていく。生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めにくらく、死に死に死に死んで死の終りにくらし。そして、手のひらに残ったものは……。
この物語は本当に面白い。
最終節の展開、そしてグレートな完結を期待しています。
マニ車を回せば徳が積める。
ならば徳エネルギーを注入すればマニ車が回りそのシステムを取り込んだギアなどの機構を組みあわせて作られた機械を用いて食糧生産や公共事業など世のため人のための仕事をすれば更に徳が積まれることになり一つの永久機関が此処に構築される。
とても合理的で、今までありそうでなかった世界観…だかしかし。
マニ車を回せば徳は積めるのは真だけど徳エネルギーを注入すればマニ車が回る命題は逆か或いは裏であり必ずしも真とは限らない。
そもそもマニ車は逆回転してるから当然ながら何らかのリスクなどの裏の面はあるわけで…
徳力学も熱力学第二法則を打ち破れる訳ではない。
憎い!私は熱力学第二法則が憎い!
現在は一瞬のうちに過去になり、誰もが何時かは死に、運命は人知を超えて荒れ狂う!
それが当然だと言わんばかりに、人々を嘲笑う!そんな熱力学第二法則を激しく憎む!
そんな運命に立ち向かう叛逆者達が描く徳パンク物語
まだ全部は読んでませんが佛理学や徳力学、分子生佛学とかのパワワードがその内に出るかもしれない
ところどころ見られる既存の単語の無理なカタカナ語化だとか、日本文化の意図的な誤解釈に基づく世界観などは有名な某ネット小説を思い起こさせるものがある。
しかしながら、所詮は先駆者の粗製な模造品であると決め付けて本作を読み始めると、その偏見は良い方向で裏切られることは間違いない。
文明の崩壊と黄昏の時代で細々と生きる人々、世界の継承権を争う得体の知れない超常の勢力たち、そして人類の再興を目指す者、ポストアポカリプスものの面白さの全てを余す事無く詰め込んだある意味"教科書的"とも言える王道の世界観。そしてその世界でそれぞれの意思や背景を抱え込んで生きる人々の群像劇は「早く続きを」と思わず言わせるだけの魅力にあふれている。
そして各所にちりばめられた仏教的要素は、一見奇をてらった一発屋のアイデアに見せかけて作品世界の根幹にかかわってくる重要な要素で、作中でのさまざまな展開や主人公達が置かれている境遇にまで余す事無く活用されている点に感嘆のため息を禁じえない。
個人的な不満点は、まずどちらかと言えばハードに構築された世界観に対して作品の展開が順風満帆すぎるきらいがある。本気で「この先どうなるんだろう?」と思わせる展開をまだ見ていない点。
次に、地名やところどころに登場する用語に関して、どこか躊躇いというか、ふざけ切れていない感じが拭えないのがある点。仏教由来の造語等はこの世界によく馴染んでいるが、地名などは今からでももっとふざけまくって遊んでも良いのではないかと思う。
『徳エネルギー』の発展によって、これまでにない発展を遂げた人類社会。
だが『徳カリプス』が起こったことにより人類文明は崩壊。
生き残った人々は徳エネルギーを求め即身仏を漁って暮らしていた……。
まるで変な薬をキメてしまったかのようなあらすじ紹介だが、全て事実である。
こうした設定が尖っている作品は、尖っている分「出落ち」っぽくなりがちなのだが、そんなことはないのがこの作品である。
「第一部」では荒廃した都市で、採掘屋を営むガンジーとクーカイが物語を牽引していくが、「第二部」では、寺院都市にて得度兵器と戦う覚醒者・肆捌空海が中心人物になったりと、「部」が切り替わるごとに主人公と舞台が移り変わり、様々な角度から物語が語られることで、話が進むにつれて徐々に世界の秘密が明らかになっていく、ストーリー構成はただの色物で終わらない凄みを感じさせてくれる。
作中で頻出する見知らぬ単語に関しては、作者がTIPsでしっかりと解説してくれているので、興味を持った人は恐れることなく新たな世界を覗いていってほしい。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)
世界の有り様を買えた「徳エネルギー」
人はそのエネルギーを使い、無尽蔵とも言えるほどに成長し続けた。
しかし、世界はその徳の力で滅びた。強制的に人を昇天(解脱)してしまうほどに徳が集まってしまったのだ。
そして世界は荒廃し、その更に後からこの物語は始まる。
非常に長い話にはなるが、キッチリと主人公やその目線が分かりとても読みやすい。そして最初は「徳パンク」なんてネタなのだろうと思っていたが、思った以上に世界についての考察や徳エネルギー、得度兵器(徳エネルギーを原動力とする兵器)についてが書かれていた。未知とも言える「徳」と言う物を様々な視点から描く作品。
一度少しだけでもいいので、時間のあるときに呼んでみると、もしかしたらあなたも「功徳を詰める」かもしれない。
古橋 秀之 のブラックロッドシリーズを思い出しました。たぶん同じこと感じる人多いんじゃないかと思います。非常に珍しい末法感のあるサイバーパンク系に魔法とか法術とかごちゃ混ぜの世界観大好きなんですがまず目にしないので非常に楽しんで読ませていただきました。功徳を回転エネルギーへと変換する逆マニ車とか発想に脱帽です。いろんな造語が実によく世界観を想像させてくれます。徳エネルギーや徳カリプスなどそれだけ聞くとギャグなんですが読み進めていくと何とも不思議な説得力がありぐいぐいと引き込まれていきます。ぜひ多くの人に読んでもらいたい作品です。