新感覚和風ポストアポカリプス

ところどころ見られる既存の単語の無理なカタカナ語化だとか、日本文化の意図的な誤解釈に基づく世界観などは有名な某ネット小説を思い起こさせるものがある。
しかしながら、所詮は先駆者の粗製な模造品であると決め付けて本作を読み始めると、その偏見は良い方向で裏切られることは間違いない。
文明の崩壊と黄昏の時代で細々と生きる人々、世界の継承権を争う得体の知れない超常の勢力たち、そして人類の再興を目指す者、ポストアポカリプスものの面白さの全てを余す事無く詰め込んだある意味"教科書的"とも言える王道の世界観。そしてその世界でそれぞれの意思や背景を抱え込んで生きる人々の群像劇は「早く続きを」と思わず言わせるだけの魅力にあふれている。
そして各所にちりばめられた仏教的要素は、一見奇をてらった一発屋のアイデアに見せかけて作品世界の根幹にかかわってくる重要な要素で、作中でのさまざまな展開や主人公達が置かれている境遇にまで余す事無く活用されている点に感嘆のため息を禁じえない。

個人的な不満点は、まずどちらかと言えばハードに構築された世界観に対して作品の展開が順風満帆すぎるきらいがある。本気で「この先どうなるんだろう?」と思わせる展開をまだ見ていない点。
次に、地名やところどころに登場する用語に関して、どこか躊躇いというか、ふざけ切れていない感じが拭えないのがある点。仏教由来の造語等はこの世界によく馴染んでいるが、地名などは今からでももっとふざけまくって遊んでも良いのではないかと思う。