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「美緒とチューバ」の予定話数とか、本編並びに注釈のこととか。


 そろそろ書かねばなるまいと思うので書きます。連載開始直後に「全十二話ぐらい」と甘い見通しを語っていた「美緒とチューバ」ですが、今週末の十二話でなんと、まだ折返しに届きません!
 まあ、折り返した後にまた同じ話数が必要かと言うと、後半はそれほどでもないと思うので、現時点での見通しとしては二十二話とか、それぐらい……かな……と思うんですけれど、まだ甘いかも。
 とは言え、さすがに三十話までは伸びないと思います。んで、今日のところは余裕見て二十五、六話になるでしょう、と仮告知しておきます。
 なんでこんなに伸びてるのか、ですけれども、ではその辺の言い訳も兼ねて、この機会に「美緒とチューバ」の成り立ちなど。


 この作品は、例によって十数年前に着手したものです。
 実は湾多の吹奏楽ネタ作品は、同じ時期の制作物で中編の完成作品が一つあります。今年の夏はそれをアップするのもいいかなあと思ったんですが、はっきりと問題点が浮かび上がっている作品でもあり、リメイクは必須で、でもそんなに短時間で何とかなりそうなキズでもなく、まあこれは来年の夏までに何とかしようと、とりあえず蔵に戻したのでした。
 で、その時の蔵整理で目に止まったのがこの「美緒とチューバ」で、そう言えばこんなのもあったな、と、どこまで使えそうか試し読みしたのが八月半ば。
 元より、ワンアイデアの、短篇から掌編に近い長さのつもりで書き始めた作品でした。ですが、十数年前の時点では、思いついたアイデアがどうにも非現実的で話にできなさそうな気がしたので、書き出しだけで放置していたのでした。
 なのに、どうしたことか、今改めて読んでみたら、昔のままのアイデアでそのまま行けそうな気がしました。うん、これは……と思って、メインネタにする曲を「音楽祭のプレリュード」に決めて、参照のためのフルスコアをネットで注文したのが九月頭。ちなみに、昔書いた原稿というのは、今バージョンで言うと第二話までの文章です。
 この作品はワンアイデアのものだと書きましたが、それはつまり、最初からラストシーンが決まっていたということ。楽譜が届いた時点で、そこに具体的な肉付けを考え、一日ほどで終わりの二話分だか三話分だかの文章は、あらかた頭の中でできてしまいました。その時点で当初の原稿と大きく変わったのが、キャラの量。先輩と美緒だけの話じゃなく、クセだらけの部員達なるべく多くを巻き込んだ描写にしたい、そんな欲が出てしまいました。
 さて、そろそろおわかりかと思いますが、そんなことをしたら、それぞれの部員が関わるドラマに向けて、色々と仕込みをしていかなければならないわけです。退屈な話なんて一つも入れたくないんで、そうなると笑いを取るためにさらに余計な仕込みが。で、話が長くなってくると、そろそろ笑いを入れなければ、とこれまた回り道を 笑。これ、「すぷりんぐうぉー」でもさんざんやってしまったことなんですが。
 湾多本人は、面白い方向になるように書いてるつもりなんですが(もちろん、クライマックスを盤石にするため、という意図もこめてます)、ただでさえ長文の饒舌体は人気が低いらしいこのサイト、読み手のみなさまに添う形になっていることを祈るばかりです。


 注釈「美緒とチューバ」は、当初、本編に脚注を入れる形を考えてました。
 音楽小説というジャンルは罪なもので、よくわからない用語を賢しげに連発することが、一種の技のように映ります。これはミリタリー小説とかハードSFなども同様なんですが、アート系の場合、軽めの注一つで理解度がかなり変わるケースもあるし、特にコメディであるならば、口語調の注釈を入れるのはむしろ面白いかも、との思いがありました。近年、アニメでは声優が映像を見ながら色々コメントして、それをサブチャンネルに収めているケースがありますが、湾多のイメージはそれに近いものです。もっとも、あの手のアニメの試みが成功しているように見えたことは一度もなかったりするんですが……。
 で、脚注を入れる、というアイデアなんですけれど、これには一つ問題がありました。カクヨムのシステムでは、作品の更新の有無は、どうやら連載の最終話が変化したかどうか、ということで判定してるようなんです。つまり、最終話扱いで脚注のページを作ってしまうと、新エピソードをアップしたとか本編の文字数を増やしたなどの更新情報が正しく通知されない……のかな? とにかく、そのへんなんかややこしそうだったんで、「最終ページで脚注」というのはボツにしました。
 各話の最終部分に注を入れる、というのもアリでしたけど、それでトータルの文字数が増えるのは、あんまりいいアピールにならないような。あと、個人的には注釈は別ウィンドウのほうが見やすいと思ったこともあり、結果としてこういうスピンオフが作られた次第です。
 ちょっと驚いたのは、予想外に「注釈」の受けがよかったこと。いやもう、こんなもの十年経っても誰も星一つ入れやしねえと思ってたのに 笑、フタを開けると、連載一話分あたりのPV数は本編よりもずっと多い。……どういうことなんだろう? まあそれはさておき。
 自作にちゃちゃを入れるノイズコレクションと割り切って、好き放題書かせてもらってる「注釈」ですが、いささかでも読み手のみなさまのお楽しみとなっておりましたら、幸いです。

6件のコメント

  •  以外にも、解説系作品って需要あるんですよね。

     エイルの出してる解説系作品はPVがエイルの中で高い方ですし(;・∀・)

     嬉しいけども、作品を読んでほしいですよね(TOT)
  • ナイスなフォローあがとうございます。
    解説系……の範疇に入るのかな、これ w。
    最初から最後まで暗記したとしても、活用できる機会はまれだと思います。むしろバグる?
    まあ、十項目に一つぐらいで、いくらか本気で学っぽいことを語ってる部分もありますので、そこを評価してもらっている……と考えることにしましょう。
    まったくの閑古鳥よりもずっと嬉しい形になっているのは確かですし。

  • 「美緒とチューバ」毎回楽しみにしてます。どんどん長くなってもついていきますから存分にお書きください!

    しかし注釈の方がPVが多いというのは謎ですね。どちらも読み返しに耐える面白さだとは思いますが……
  • 小此木センウ様

    殺し文句のようなメッセージ、ありがとうございますm(__)m。

    今だから言いますけれど、この本編の方、最初の二、三日間ほどはPV数が0のままでした。
    ああ、今までと傾向がもろに変わる方向だと、こうなるんだなと思い(つながりのある皆様がたまたま忙しい時期だったというのもあるとも思いましたけれど)、でも読者がいないんなら好き放題書けるなとほくそ笑み 笑、ぼちぼち続けていたら、それなりに応援などいただけるようになって、今に至ります。

    一方、注釈の方はなぜか開始直後からPVが伸びていて、未だに明解な理由はわからないのですけれど、読者がいるんならあんまりバカは書けないなと早々に自重(?)するようになって、今に至ります。

    面白いと言っていただけるのが何より嬉しいです。今後ともよろしくお願いいたします。

  •  わたしはバンド絡みのお話を書いた際に、本編とはあまり関係ないのについつい楽器のことやら演奏のことやらのマニアックな説明を入れがちになってしまって、何度も描写を削りました。

     それでもまだなお余計だなと思う描写が削りきれていませんが、それはそれで楽しみにしてくださる読者さんもおられたようで、ちょっとわたしの芸風(いや作風ですか)として受け止められている節も……。

     解説編が別にあるのもユニークでいいですね。その発想はありませんでした。

     あ、でも小説執筆で描写を削ったストレスの捌け口とでも言うべきちらしの裏エッセイを別途作って、書きたいだけ書きました笑笑。
  • 星加のん様

     コメントありがとゔございます。

     ものの本には、物語の進行と関係ない「作者の趣味」的な部分は極力控えるように、などと書かれておりますが、一方で本読みの皆さんは単なるストーリー的な楽しみ以外に、知見を得られるとか自分の趣味に寄り添ってくれるとかの部分を、しばしば高く評価します。
     ので、私はそういうのも大いにアリという考え方で作品を書いています ^^。まあ、やりすぎない程度に、ではありますが。

    >解説編が別にあるのもユニークでいいですね。 

     正直、あんまり深く考えずに始めてみたことなんですけれど、今回の発想の元を振り返ってみると、「脚注で遊んでる小説をいくつも読んでいた」ことが挙げられるかも知れません。基本、文章の注なんて生真面目で面白みも何もないもんなんですが、そこを逆手に取って遊びまくってる本がたまにあります(中には学術書でさえ)。
     明らかに今回の湾多のスピンオフの遠因となった作品は以下の通り。私自身のアイデアの整理も兼ねて、この際ですから情報提示しておきます。

    ・牧野修「踊るバビロン」 「SFバカ本 だるま篇」(広済堂文庫)所収
    ・コニー・ウィリス「魂はみずからの社会を選ぶ――侵略と撃退:
    エミリー・ディキンスンの詩二篇の執筆年代再考:ウェルズ的視点」
    大森望訳『90年代SF傑作選』(ハヤカワ文庫SF)所収

     まあ、私のは先行例をさらにゆるゆるにして、ほとんど「悪魔の辞典」のパロディーみたいになってるんですが……あ、そういえば、一時期流行った「○○の辞典」の類も元ネタの一つかも知れません。こうして並べてみると、今回の「注釈」は書かれるべくして書かれたものという感じが 笑。
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