この作品は、一応十数年前に完結させたものの、どうしようもない出来で、リメイクに取り掛かったけれども、それもまるで進まず、そのままお蔵入りにしていたものです。
なんでひどい出来になったかと言うと、ここからは前の近況ノートの続きみたいな話になるのですが、「商業出版レベル」を意識しすぎたからです。
投稿作品を評価する目安として、自分は一般的な商業出版の価値基準を、おおむねそのままものさしにしている、と前回申しました。ですが、この言い方には落とし穴があって、結果としてろくでもない作品が出来てしまうこともあります。
具体的に言うと。
「すぷりんぐ・うぉー」は、ラノベ路線だけれどもSF要素があって、基本骨格は学園ラブコメ、という構想で書いた長編でした。当初はまだまだ習作のうちと思っていたのですが、その当時、通っていた小説講座で「欠点はあるけれども、これで行けるところまで行こう」と背中を押してくれたこともあって、ある程度筋が出来てから、ラノベの新人賞を本格的に狙う、そのメインの投稿作品に格上げとなったのです。
ラノベの新人賞、ということは、まず本格過ぎるSFはだめ。理系的な説明は最低限に抑え、展開の速さを優先すること、ということです。
さらに、冗長な表現、多めの漢字というものも忌避されます。構成がテンプレから外れすぎるのもマイナス。プロローグが長すぎるとか、単純に400枚超えというのは応募先が当時はありませんでした。
という要求基準を色々満たしていると、まあこれは私の未熟さ故というのもあるのですが、ひどく珍妙な、スケールの小さい、ややこしいところは全部コメディ色でごまかしただけの、全然おもしろくない駄作が出来がってしまいました。
結論から言うと、私はあの時、とことん自分の好きなものを書きたいのだから放っておいてくれと言うべきだったのでしょう。とはいえ、プロデビューを一応の目標に開かれているその小説講座では、その物言いは自己矛盾そのもので、一種の禁句だったのですが。
私がカクヨムに投稿を始めたのは、最終的には、とある長編の構想を具体化するためで、過去作品は、まあ出来のいい短編ぐらい上げてもいいかな、と思ってきたのですが、最近になって、ふと、さんざんに版を重ねて未完のままの長編のあれこれに目が止まってしまいました。
今ならこれはまともな形で完成できる。何しろ、枚数制限もない。テンプレから外れてもいい。きまじめなSFとふざけたラノベコメディとバカバカしいスパイアクションのハイブリッドを書いたところで、掲載レーベルがない、などとツッコミを食らう心配もない。
読者がほとんど来ない可能性はあります。でもそれは、今現在と何が異なるのでしょう?
前回のノートの続きで言うと、私が言う「商業出版レベル」というのは、「実際には商業的に出版不可能な作品なんだけど、一定の技術水準は満たしていて、確かに"おもしろさ"の存在する作品」という意味も含んでます。そして、「すぷりんぐ・うぉー」は、そのいちばんわかりやすい例として完結させるつもりです。
……とはいえ、ノリとか、笑いどころとか、多分ふるーいものになってると思うんですよね。
個人的には、朝日ソノラマとか、リニューアル前のスニーカー文庫とか、それにハヤカワJAの柔らか目のがまぶされたような、みたいなつもりなんですが、どんだけ需要があるものか。
ちなみに、プロローグ部分はほとんどが最近書き起こしたもので、もう仕上げてます。それに続く部分は、前半終了までは以前のものを軽く改稿する予定。ですから、作品半ばまでは、ある程度のペースで公開できる、と思います。
正直、ドラマ部分のつじつまなどよりは、笑いがスベってないかどうかがすごく気になるので、あんまりにも痛ましいところは遠慮なくご指摘いただけると、キツいですけどありがたいです。よろしくお願いします。