句会の参加作品は、下記の8句になりました。
【1】蚊の刺した痕に残った読後感
【2】壁紙もデフォルトのまま初景色
【3】立春の朝豆踏んで急ぎ足
【4】見紛うた小指の爪と桜貝
【5】浅春の数字を追うやWebページ
【6】語順換えノートに桜乱れ咲き
【7】白無垢のフォトやはこべのやうな人
【8】忘れ雪解けて濡れたる能登景や
1番良いと思った「特選句を1句」、次点の「並選句を1点」の計2句選び、投票をお願いします。特選句は2点、並選句は1点とし、合計得点を算出します。
投句された作家さんは、「自身の作品以外」から特選句・並選句を選んで下さい。
■投票期間
2/14~2/17の4日間
■投票方法
投票方法も、参加方法と同様になります。私の近況ノートか、私の公開している作品の応援コメント欄に、書き込みして下さい。通知で分かるので、どの作品にでも構いません。
また、良かった点などのコメントを残して頂ければ、近況ノートで紹介します。
■投票例■
特選【No.○】、並選【No.○】
■■■投票結果■■■
特選6(該当無し2):並選8
【1】合計:2点(特選 ・並選2)
【2】合計:8点(特選4・並選 )
【3】合計:3点(特選 ・並選3)
【4】合計:4点(特選1・並選2)
【5】合計:2点(特選1・並選 )
【6】合計:0点(特選 ・並選 )
【7】合計:1点(特選 ・並選1)
【8】合計:0点(特選 ・並選 )
もっとも得点が多かったのは【2】の句となりました。自分以外の「1番良かったものを特選」として欲しかったのですが、「該当なし」が2票入りました。
自分以外の句に票を入れないとうことで、有利・不利が発生してしまいます。よって今回の結果は、投票数7の時点で発表します。
ちなみに作者は、私でした……。作者名は匿名にしようかと悩んだのですが、公開することにします。
■■■感想やコメントなど■■■
【1】蚊の刺した痕に残った読後感
・蚊に刺されてかゆくてたまらない、そんなムズムズするような読書をされたのでしょうか。視点が新鮮でした。
【2】壁紙もデフォルトのまま初景色
・職場で年越し。年明けはじめて目にした景色はPCデフォルトの壁紙……。サラリーマン哀歌な俳句ととりました。
・引越し初日の部屋を、余韻を残しつつ淡々と表現されて、その静かな感動が気持ちいい。
上中でコンピューター用語を使っていたので、新しいパソコンの句かなと思いきや、下五でひっくり返すのも俳句巧者だと思います。
これからどんな部屋になるのでしょうね。
・見慣れた景色も、初期設定のままの壁紙も、新年の清々しい気持ちで眺めたら、いつもとは違って見えてくるのかもしれません。とても惹かれる句でした。
【3】立春の朝豆踏んで急ぎ足
・子らと豆撒きに、御馳走にと興じた節分。遅くまで騒ぎ、寝過ごした翌朝の慌ただしさ。そんなほのぼの家庭の様子でしょうか。
・豆まきの賑やかさ、拾いきれない豆、そして翌朝の慌ただしさ。とても微笑ましくて、楽しい句だと思いました。
・朝の忙しい情景が浮かんできます。立春と云う固い季語も続く「豆」が和らげるようです。
【4】見紛うた小指の爪と桜貝
・小指の爪と桜貝を見間違えたと、そう言っているだけなのですが、多分、足の小指に薄ピンクのマニキュアが塗られているのでしょう。
おしゃれな女性像がリアルです。
残念なのは上五がネタばらし(説明)になっていること。ここが別の表現になっているともっと良かったかな。
・寒さからかヒールからか、帰宅した時の驚きが句から伝わるようです。
・誰が読んでも良い句より、完成度では及ばなくてもポテンシャルを感じるNo.4を応援してみたくなりました。あいまいさやごまかしのない単純さが好ましく、画竜点睛を待っているように思えます。
【7】白無垢のフォトやはこべのやうな人
・「白無垢」と「はこべ」の関係性は面白いが、季語のはこべが比喩となってしまったところが勿体なかった。「はこべ」の持つ季節感や姿・七草のイメージと、白無垢の人物とが相乗効果で、もっと良くなる気がする。
・柔らかく美しいNo.7のほぼ一択だった(「やうな」が好き)
投票だけでなく、また特選句や並選句に選ばずとも、幾つかの感想やコメントを頂きました。本来の句会であれば、誰が何を選んだかという事が重要になります。
しかし、私も含めて初心者の方も多いので、この近況ノートに投票されたものと、私のコメント以外は匿名とさせて下さい。
【5】浅春の数字を追うやWebページ
私の特選としたのは【5】です。時候の季語の浅春の使い方が上手いと思います。「浅春」は立春から啓蟄頃までの時候の季語。立春となっても、まだまだ寒い日が続きます。啓蟄を迎える前でも、まだ何も蠢き出す感触のない焦り。それが作者の「浅春」であり、相応しい季語に感じます。
上五中七までは、値上げラッシュや会社や学校の成績や受験を想像してしまいますが、下五でネタばらし。この句の内容でも、ネット上での登録者数や再生数などに問題なく結び付くと思います。
テクニックとしては「や」で詠嘆して目立たせた後に、さらに「Web」と英字を続ける工夫。英字表記を入れた俳句もありますが、詠嘆と連続させたことで、さらに目立たせる効果があるように感じます。
カクヨム俳句コンテストでは、小説投稿サイトならではの「面白い発想」や「刺激を受けた発想」というコメントがありますが、それと評価は全くの別物で、選考に残るのはザ・俳句といったものが多いです。この句は、カクヨムらしさを残しつつ俳句として成立させ、カクヨム100選を狙える句だと感じました。
【1】蚊の刺した痕に残った読後感
私が並選としたのは【1】の句です。その理由は、発想の面白さ。本の余韻が、蚊の痒みよって侵食されてゆく句と感じました。下五の読後感の濁音も、句の印象に合い好きです。
他の方の感想では、○○た○○た○○の三段切れであり、散文的や説明っぽいとの感想もありました。
個人的には中七の「残った」と、助詞の「に」が気になりました。「残った」がどこに掛かるかで、意味も少し変わります。
①「痕に残った」ならば、蚊に刺され痕となってしまっている=助詞が「に」なので、もう腫れた状態がそこにあるの意味になる。
②「残った読後感」ならば、ムズムズする読後感?
どちらにも取れるので、作句の意図が明確であれば、断トツで特選にしていたかもしれません。
■蚊の残す甲に達磨の読後感
本を読み終わり、気付けば手には蚊の刺された痕。2ヶ所も刺され達磨の形に腫れている。もう、本の余韻なんてない。
■憎き蚊や太宰治の読後感
これはもっと単純で、太宰治の余韻が蚊の痒みに侵食されてゆく。
俳句はロジカルな面もあり、理系の俳人の方は多いそうです。「蚊」という一音の季語は、十七音の中に組み込むことは簡単ですが、一音に対して残り十六音をどのように合わせるか? それによって主役となる季語の「蚊」が、弱くなりがちにもなります。
※「蚊」が「虫」+「文」であり、そこから「文章」や「文豪」、または「ブン」の読みの解釈が出来るのかという感想がありました。「蚊」は季語なので、それを分解する・駄洒落にするは、基本的にあってはならない事です。付け加えるなら凡人発想で、バッサリ切られると思います。
俳句では、掛詞を狙う必要はありません。掛詞自体も正しい解釈が出来た上で、違う意味も想像出来る程度。俳句で掛詞の意味を重要視するならば、それは俳句でなく川柳ではないでしょうか?
少しガチ感が強くなりましたが、他の句についての個人的な感想コメントの要望があればお声かけ下さい。
最後になりますが、お試しではありましたが句会に参加頂きありがとうございました。それぞれの句に刺激を受け、作句してみたものも幾つかありました。
今回はお試し企画だったので、幾つかの問題や課題はあります。次があるかは未定ですが、機会があれば宜しくお願いいたします。