文長こすと

この暗く広く寒い宇宙で、僕は小惑星に花を植え続けている。レゴリスの隙間に、誰が見るかもわからない、たったの一度も人の手のぬくもりを知ることもないかもしれない花を。 2024年3…

謎の地球外勢力との「宇宙戦争」の最中にあった地球人類。天王星の衛星エンブリエル付近を航行中だった国連宇宙軍の掃宙艇は、まるで古代魚のような姿をした微小隕石に遭遇する。任務に従って…

戦争後の世界における唯一最大の大都会、その名も市《シティ》。 超々高層ビルが林立する、そんな巨大都市の片隅に暮らす労働者たちにも、きらめく降誕祭の奇跡はちゃんと訪れるのだった。明…

1987年、新設されたばかりの緑町北高校パソコン部では、校内での知名度を上げるために悪戦苦闘していた。何かインパクトのあるイベントを、ということで思いついたのが、日本ではマイナー…

四十歳手前くらいの女とその母と、母と今くらしている女のお話。

妹を亡くした翌朝、ユーリはある決意を胸に地平線を睨みつける。 姿を現したのは、巨大な、灰色の墓石だった。 ＊ 2014年の覆面作家企画6の参加作品に加筆修正したものです。 「…

ハッピー心と心の触れ合い、観覧車に乗る話 ※あまりハッピーではない 短いので読んでください！ ※2024.3.カクヨムコン円城塔賞、最終選考選出(30/2168作) ありがとう…

SNSで知り合った「こばると」さんに会うため、僕は四国の南にある小さな島へとやってきた。明るい青色の海に囲まれた島、その港の桟橋に姿を現した彼女は意外な事実を僕に告げた。

　私の全ては、たった一度の喫煙で、あの女の手中に収められてしまったのだ。 　鴨羽の煙管で煙草を吸うと、どんな煙草も美味く感じる。しかし、この煙管で煙草を吸えば吸うほど、鳥頭にな…

「あたしはアイオン・アイオライト。ドワーフの美姫、シンシャ様にお仕えしている。 　宝石と金属を愛するシンシャ様のもとには、さまざまな『秘密』を抱えた人々が相談にやってくる。たい…

殺伐感情戦線テーマ『暗黒』参加作です

全9話。 プセマローゼの島の空には、奇月と呼ばれる人工の月が浮かんでいた。毒を吐き、島の空気を汚染している。 その島の地下街に住んでいる少年・エトラは、いつか地上に出て本物の…

産まれて七日後の名づけの場で、妖精たちから目に見えぬ贈り物を授かったお姫様がおりました。 自分の国と国民を護る為に、賢さや勇気、やさしさや品格をつかさどる妖精達から様々な祝福を授…

クリスマスの日に、森の動物の子どもたちは、もみの木をきれいにかざりつけました。けれども、暗い夜には、せっかく作ったクリスマスツリーが見えなくなってしまうのです。そこに、たまたま、…

クリスマスの日、幼い彼女の元へとやって来た仔犬。悲しいこともあったけど、最後には幸せになった、彼のおなはしです。彼には、彼として生きる価値がちゃんとあったのです。 （ストレートに…

駆け出しの傭兵、窮奇は名を売るために、伝説の女狙撃手である火車を狙撃対決で殺そうとするが…… サイバーパンク殺伐百合短編 殺伐百合投稿企画「殺伐感情戦線」、第七十九回殺伐感情戦…

新型コロナウイルスに閉じ込められた2020年の夏。瀬戸内海と四国山脈に挟まれた香川県の小さな街。求職活動中の裕之は、学生時代に入り浸っていた地元のゲームセンターで前世紀の格闘ゲー…

かぐやSFコンテスト2落選供養

あのとき、ヴォイジャーは孤独ではなかった。私がいたのだから。

夏休みも中盤戦。好きな人に“好き”と言えない僕は、悶々と部屋で過ごしている。春のフリーマーケットで買ってきた、古びたカセットテープ式のウォークマンを手にして……。

「ねえ、おねえちゃん。お願いがあるの」 　白いかんばせの少女はおもねるように甘えた。長過ぎる犬歯を自慢げに覗かせ、青褪めた唇をひずませる。 「おねえちゃんの、左腕をちょうだい…

真偽の怪しい情報を元に、平和維持軍は砂漠の中のダム警備に赴く。その一員である僕はひたすら続く炎熱地獄にほとほとうんざりしていた。予想通り半日を過ぎて敵影は皆無。そんな中ある騒動が…

刃物を持った女子中学生vs社会 「空」をテーマに小説を書きました。それに沿って爽やかな話になるはずが、ストレスのせいでこうなりました。 ※人物のセリフの中に、一部不適切な表現…

不死者である『彼女』は死を望んでいた。『彼女』を愛している『私』は、『彼女』の望みをかなえるために、ある薬を開発するのだが…… 不死者殺伐百合SF短編 殺伐百合投稿企画「殺伐感…

　スランプに陥っていたアマチュア小説家の男は、自分の小説を自分が書かずに読むための妙案を思いつくが…… SF短編小説

スクラップ拾いをしていたマナの目の前に、死体が落ちてくる。困惑したマナは、とりあえず親友のミカを呼ぶのだが…… サイバーパンク百合短編

この街では一年に数度「死者」が降る。それを窓辺で眺めつづける曾祖母が「私」にかたった、幼き日の彼女と親友の物語。企画「死体が降ってきたところから始まる短編」に寄せた作品。

　日常をただ意味も無意味も抱えながら生きている青少年はその日、天使の死体と出会った。彼女を目にした日から彼の世界がほんの少し色が変わっていく。ただ冷静に死体をいじくるだけの日が記…

　鈍い音がして、それから俺は気づく。また死体が落ちてきた。俺の目の前にはどこからから落下してきた死体があって、それに俺が気づかなかったのはボケっと俯きながら歩いていたからだ。 　…

この世には二種類のマラソンランナーがいる。東上サキと、それ以外だ。 私ことメイは唯一無二のものになるため、サキの背中を追い続ける。

世界の終わりは案外と静かにやってきた。 終末世界を旅する少女と猫耳少女の物語。

これは世界を変えたかもしれない男の話。 世界は変わった。あるい世界は変わらない。 しかし人間はきっと、変わった。

「蛇が蛇を噛むとどうなるか、知ってる？」「毒蛇がってこと？」「そうそう。毒蛇どうしが喧嘩かなにかしたとして、相手を噛んだら」――提示されるのはふたりの会話だけ。Twitter投稿…

〈スカーレット〉は腕利きの拳銃使い。しかし、3年前、謎めいた拳銃使い〈鬼火〉との闘いに敗れた。彼女は復讐を誓い、その影を追うが……

前島ケイ様の自主企画＜SF研＞向けに書いた短編です。 世界観は伊藤計劃先生の『ハーモニー』、話の展開は星新一先生のショートショート『味ラジオ』みたいな感じです。 プログラム部…

その惑星の植民事業は、土着のウイルスによる伝染病に阻まれた。 だが植民を諦めない政府は、罹患者を隔離し、 そして、それ専用の医療従事用アンドロイドを開発し医療に当たらせた。 彼ら…

気まぐれショートショート集はじめました。不定期更新（ごめんネ！）。ジャンルは特に定めずに、「ちょっと奇妙な物語」をコンセプトに書いていこうと思っています。そこのあなた、少しお時間…

10年間ずっとひとりで金庫番をしてきたロボットメイド。存在意義を求めて、彼女は自己複製に走る―――

＜KAC20215　スマホ＞ ミキは友達と二人山の上の温泉に来ていた。そこで見たまぶしい光と共に台地が大きく揺れた。 日本が世界が終わる。残された人々は最後に未来に向けてメッセー…

第三回百合文芸に出したかったのに出せなかった魔法少女百合です。 ※2023.1.9追加… 大幅に書き改めるため、ⅡとⅢを一旦非公開にしました。 ※2023.1.14 改稿した…

23世紀。人口爆発に対処できなくなった人類は、効率的な食料供給を追い求めるあまり、食事という文化を解体した。料理という言葉の意味は、供給される栄養価を調整された無味無臭のキャンバ…

自主企画：『（週刊カクヨムコラム企画）Web小説をカクヨムするのはなぜ？』　参加用作品です。 https://kakuyomu.jp/user_events/117735405…

【第17回 坊ちゃん文学賞応募作】落選供養 私と、私を”天使”と呼ぶ女。雨と涙と汗の滲む夏の偽り。

私たちをパートナーとして、無生物惑星だったこの星の開発を一緒に行った開拓者の人たち。ある日突然、彼らは私たちに後を託して、星空の彼方に去って行った。でも、きっとあの人たちは戻って…

ある日突然姿を消した「先生」。組織を裏切った先生を殺せと、「私」に指令が下される。私は夜のホームに先生を見つけるが、その隣には知らない女の姿があった。 殺伐百合短編 Twit…

機械音声は「ショウギ」を指せと命令した。負けた方は死んでもらう、とも。日本旅行の最中、何者かに拉致されたネルソンは足を鎖に繋がれ、イザベラと名乗る女と知らない部屋にいた。将棋のル…

戦争《アトミック》により、世界の大部分が破壊されて約半世紀。巨大企業群によって再建された世界で、人々はそれぞれの人生を生き抜こうとしていた。世界の中心である唯一の巨大都市・市《シ…

科学技術が異様発達したフラスコ・シティで活動する人探し専門の探偵、『犬面』。 全身義体の彼は、ある日脳を奪われた男からの「盗まれた自分の脳を取り戻して欲しい」という依頼を受ける。…

　”蝶害”。蝶が舞う日。 　それは、20年前に北京で発生してから、定期的に起きる異常災害だ。 　”私”と先輩は同じ場所で暮らしながら、蝶の羽ばたきを聞いている。 「先輩は、蝶じ…

吸血鬼の相互扶助組織『血盟』。当代最強の『処刑人』に血盟から密命が下された。古城を武装占拠した吸血鬼至上主義者十名、『掟』に反した彼らの首をすべて討ち取ること。月光の下、使命を帯…