徹底的に無駄を削ぎ落した、スピード感ある文体が特徴的な一篇です。キャラクターの言動と、言動に直結する心理と、物語を成立させるのに最低限必要な説明のみで構築された文章、と評していいのではないかと思います。「あえて書かない」美学が通底されています。
それでいて場の質感が伝わってくるのは、キャラクターの感覚を綿密にシミュレートして言葉が選ばれているからでしょう。たとえば「うすらでかいリボルバー」という表現。その情報量に、言葉選びの的確さに、僕は感銘を覚えました。
書きすぎないからこそ行間から滲んでくる空気のようなものが、小説にはあります。シンプルで乾いた、しかしどこか哀愁の漂うアウトローの物語を描くのにうってつけの文章を、作者は採用したのだと思います。技巧的で、力強く、哀しく、美しい作品です。
まず、情景描写が素晴らしかった。
荒野を渡る風と、土煙と枯れ草の匂いが、少ない文字数の中でも感じられました。
そして、明かされる父の過去と、受け継がれる暴力。その暴力の具現たる銀色のコルト・ドラグーン!
ここまでで、西部劇の西部劇たる要素を満たしています。ラストの銃撃戦もまた見事でした。あの時点で敵役は、まさかイーファが撃ってくるとは思っていない。
そこへ放たれる復讐の銃弾。
このくだりは、ガンマニアたるHK氏の本領発揮とでもいうべきところで、実に迫力のあるシーンでした。
そして、敵を撃ち倒し、荒野のアウトローとなったイーファは、1人荒野へと去る。
そう、アウトローの道を歩んだものは孤独に荒野へと去る。ここも、西部劇のセオリーを踏んだいい終わり方です。
おれもそうだったよ。風に、呼ばれたのさ。
この一行で本当に痺れました。
めちゃくちゃ面白かったです。
今後とも頑張って書いていってください。
追記:機龍警察のイーファが好きなので、主人公の名前がたまたまイーファだったのが嬉しかったです。