鋼野タケシ

あの世とこの世の境目で、死に掛けさまよう二人の魂。 「お二人には魂の生存をかけて、勝負をしていただきます。勝った方は生き残り、負けた方が死亡します」 勝つしかない。もしも、ま…

ファミコンに育てられたような者だ。 ＲＰＧに読み書きを習ったような者だ。 外で遊べる場所が少しずつ減っていき、代わりに室内の遊びが充実していく。 ８０年代生まれにはそういった経…

宇宙コロニー内で多発する、暴走ロボットによる殺人事件。 保安官であるスティーブは家族すら犠牲にして、暴走ロボットの破壊に人生を捧げている。 別れた妻と十年ぶりの再会を約束したあ…

どうやら　ぼくは　しんでしまって この　はくしのせかいに ひらがな　として　てんせいした　らしい。 はくしのせかいを　たびするうち であったのは　かんじ　に　てんせいした　おん…

かつて楽園と謳われた国の廃墟に、一人の少年と老人がいた。 妖しい風貌の少年は問う。「願いを言え。ひとつだけ叶えてやる」 老人は答える。「もしも叶うなら一度だけ、死んでしまったあの…

■ツアー概要■ 大人気のドラゴン狩りを格安のバスツアーでご提供。 顧客満足度３年連続Ｎｏ，１のシグムンドツーリストが主催する異世界ドラゴン狩りツアー、 魔力に秀でたエルフの添乗員…

真っ赤な髪に赤いピアス。アイシャドウに口紅も赤。 ヘヴィメタル・バンドのボーカルである美波。 「お前が来ると雨が降るんだよ」と、彼女は憂鬱そうにつぶやく。 冷たい雨が止むまでの、…

灼熱の太陽が輝くアリゾナの地で、ディエゴは死にかけていた。 形見のコルト・ドラグーンを手に、早撃ちの腕を磨いて来た。誰にも負けない自信があった。 だがディエゴには、人を撃つ勇気…

バス停まで、あと20分。 今日、告白するとぼくは決めた。 彼女とぼくの60センチを、てのひらまで15センチに縮める。 先輩と後輩の距離から、恋人の距離まで。 今日、必ず。 ぼく…

かつて日本には正義のヒーローがいた。 世界征服を企む悪の秘密結社と十年に渡る死闘。 ついにヒーローは悪の大首領を倒し、組織を壊滅させる。 そして、どこかへと消えて行った。 悪の…

太田陽介、熱田真一、伊吹光。 太陽と熱、光。似たような名前の三人組。 この世界にはぼくらと、ぼくら以外しかいない。 ぼくらは同じ場所で育ち、同じ青春時代を生きた。 友情は永遠の…

「スイッチを予約して来た！」先輩は興奮気味に、ぼくに語った。 　ぼくはゲームなんかやらない。だから、新しいゲーム機に興味を持つ先輩の気持ちもわからない。 「ゲームを予約するっての…

かっぱおやじは休憩時間、いつもかっぱ巻きを食っている。 アルバイト最後の日、ぼくは勇気を出して尋ねた。 「どうして毎日、かっぱ巻きなんですか？」

奈良県、戸岩谷。 今から四百年以上も前、この地で剣豪・柳生宗厳が山籠もりをしたという伝説がある。 巨石の転がる戸岩谷に籠る柳生宗厳。 彼はそこで、一人の天狗と戦った。

改札を出てすぐのバスロータリーに、ドラえもんの銅像が建っている。 ２０１１年、川崎市の多摩区に藤子・Ｆ・不二雄ミュージアムが建てられた。 それ以来、ドラえもんを始めとする藤子Ｆ…

　二ヶ領用水の、桜の木の下。 　彼女はいつも、かにぱんを食べていた。 　パンを小さくちぎっては、パンくずを川面に落とす。鯉が群がって、彼女の落としたパンくずを食べていた。 　鯉に…

　真っ黒な楕円形のオブジェ。中心は大きなスプーンでくりぬかれたように欠けている。 　大きな台座に鎮座する、継ぎ目のない黒い楕円。 　日の光を鈍く照り返す、そのオブジェは『時空翔』…

「ここは良いところですね」と、若い男性が言った。わたしは微笑んで、そうですねと答える。 　訪れる多くの人が、わたしのふるさとを褒めてくれる。 「良いところですね」と。 「都会と…

たしかに、死んでしまいたいと言った。毎日がこんなに辛いなら死んでしまったほうがマシだと、弱音を漏らした覚えはある。だけど酒の席でのことだ。本当に死にたいなんて少しも思ってない。 …

十年ぶりに父のふるさとを訪れた。見渡す限りの田んぼ、人の通らない道路、山と川、どこまで行っても自然。「なにもない場所」と、ふるさとを語る時、父は必ずそう言った。