楽器職人の老人パウロは、かつて海沿いの王国に住んでいた。その国の平和と繁栄は永遠に続くものだと、彼は信じていた。しかし、永遠など存在しないと、魔法使いのヨハネスは言う。ヨハネスは一宿一飯の礼に、パウロに奇跡を実現してみせた。静かな筆致で描かれる、喪われた王国と奇跡の一夜の物語。胸が痛むほど懐かしいその地で、パウロが出会うものとは。