廃墟、魔法、記憶。老人がかつて造った最高のチェロが初めて歌うとき。

楽器職人の老人パウロは、かつて海沿いの王国に住んでいた。
その国の平和と繁栄は永遠に続くものだと、彼は信じていた。

しかし、永遠など存在しないと、魔法使いのヨハネスは言う。
ヨハネスは一宿一飯の礼に、パウロに奇跡を実現してみせた。

静かな筆致で描かれる、喪われた王国と奇跡の一夜の物語。
胸が痛むほど懐かしいその地で、パウロが出会うものとは。