真っ赤にキメたヘヴィメタルバンドのヴォーカリスト。小さな体をいっぱいに振り回して刺々しく歌う彼女は、もともとは黒髪の優等生、ごく普通の良い子だった。それがなぜ、中学生だったあるとき突然変わったのか。なぜ、30歳を目前に仲間を失っても音楽を続けるのか。雨男の「ぼく」は雨の降る夜の中、彼女の思いを聞く。静かに紡がれる短編にヘヴィメタルの叫びを垣間見る。弱く強く痛々しくて生き生きとした彼女は雨宿りの後、相変わらずのまっすぐさで「ぼく」を魅了するのだ。
雨は嫌いだったはずなのですが、読み終わってみると何故だか雨の日もありかなぁと思ってしまう気持ちになりました。きっと世界のどこかにあるだろう二人の出来事。このありふれた中に夢を追う辛さや、10代の苦悩、誰しも持っているだろう影響を受けた一曲、不安定に見える関係もなんだか微笑ましく温かくなります。おすすめです