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3月はKACとともにあった……ので振り返り


「らしくないこと」はしない方がいいらしい。

 まったくその通りだ。世界の真理だ。反論の余地はない。
「自分らしさ」をどこまで貫けるかで人生の充実度は変わってくる。
 らしさを認めてくれない周りや社会、「真の姿」が見つからない自分への苛立ちなどは、きっと些末な問題なのだろう。

 その言葉に従って細々と活動していたのだが、カクヨム様が突然「カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ、略してKACを開催する」なんて話を持ち出してきたのである。

 ここで深入りするのは「らしくない」。私はまだまだ未熟な身。優秀な作品を読んで学んでいくのだ……と思ったのだが、
「カクヨム様の意向に反することは即ち、大いなる主の意志に反することなのではないか。それは輪をかけて自分らしくないのでは?」 
 という意見があったため、やむを得ず参加を決意したのである。

 今回はその作品達をざっと振り返りたいと思う。

第1回:「〇〇には三分以内にやらなければならないことがあった」という書き出し
(追加お題:「全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ」)
 初っ端からクセがすごい。
「次回以降もこのレベルで来んの……?」と思った人も少なくなかったろう。

1.日本在住バッファロー VS 満員電車 VS 便意
https://kakuyomu.jp/works/16818093072850576684

 コメント:
 無茶なお題を解決するためだけに作ったもの。色々とこじつけているため、物語としては半ば破綻している。
 こういうネタは夏場の刺し身みたいな側面を持つ。急速に鮮度が劣化するのでさっさと出さなくてはならない。スピード勝負だ。
 なお、投稿してから調べてみると同じ考えに至った方がちらほら。

2.終末タスク
https://kakuyomu.jp/works/16818093072935470415

 コメント:
 2本目だがKACの中で一番熱量があったもの。
 以前の近況ノートでも伝えた通り、自分が「正しい」と思った作品。
 かなり分かりにくい構成だし、救いもない話だが、創作業界で語られる「勝手に物語が動く」経験に一番近づけた。
 これが出せただけでも、今回のKACは悪くなかったと思う。


第2回:「住宅の内見」
 前回ほどではないが、それなりに限定されたシチュエーション。
 住宅、依頼人、大家、仲介人など多くの要素で取っ掛かりがあるので、意外と掘り進められそうなお題だった。
 いわくつき物件と絡める方が多かったように思われた。

3.住宅の内見
https://kakuyomu.jp/works/16818093073114302332

 コメント:
 お題と同じタイトルにしたもの。他の方とダブるだろと思ったし、実際にそうなったのだが、思ったより健闘している。
 推測だが検索した際に出てきやすいからだろう。変に凝ったタイトルつけるくらいなら、同じにした方が良いみたいだ。
 ちなみにこの作品の仕掛けも既に少なくない人が思いついている。小手先のネタではやはり勝負にならないか。

4.人の家を内見する人はバカ
https://kakuyomu.jp/works/16818093073167912584

 コメント:
 他と比べ評判のあった作品。 
 それなりにキャッチーなタイトルだし、他の作品に比べると人間味はあったかもしれない。
 ただ、この続編を出してもおそらく空振るだろうなあとは思う。
 シュールは人を引き付けやすい反面、持続性に欠けるのだ。


第3回:「箱」
 漢字1文字だけで「箱」。
 色々なものに当てはめられそうだった。
 結論から言うと、当てはめられそうなだけだった。

5.箱の中身はなんじゃろな~?
https://kakuyomu.jp/works/16818093073368431507

 コメント:
 こんな風になったら怖いだろうな、というイメージを基に作ったもの。
 箱の中身当てゲーム自体は広く知れ渡っているのもあって、細部は違えど少なくなかった。
 当時の自分の意向か、書き方を変に凝った箇所があるが、素直に書いた方が読みやすいよと思った。

6.独り箱、ふたり
https://kakuyomu.jp/works/16818093073380411985

 コメント:
 ヤンデレにはある程度過程がいるんだなあと思った作品。
 狂気・犯行シーンだけ書いてもダメなのだ。それこそ「この子になら身を委ねても」という背景や性格描写、悪魔的な魅力が必須だったのだ。
 一昔前に流行した暴力ワガママ女に適当に語尾に「〜なんだから」つけとけばツンデレになるやろ発想と同じ失敗をしたと言える。デレても願い下げだ。
 まあ、箱=電話ボックスと見立ててどうこうが大前提だったのもあって、あんまり細かく書いてもお題から乖離するしなあと思っていた節がある。甘えた作品だった。
 PVで健闘したのは「ヤンデレ」タグのおかげだろう。


第4回:「ささくれ」
 本来のささくれ、心のささくれ、あとは「笹くれ」が大体浮かんできたものだった。
 多分「心のささくれ」が一番感傷的に仕上がりそうだと思ったんだけども、力量がなかった。

7.ささくれぺりぺり
https://kakuyomu.jp/works/16818093073483637256

 コメント:
「可能な限りダッシュ」して仕上げた作品。
 バッファローの件、内見の件で、早く仕上げたってよっぽど上手くなかったら変わらないよ、と今の自分なら思うのだが、
 当時の自分は同じネタを先に出される危機感のようなものを持っていたのだろう。
 三度に渡る反応を見て流石に「即出し」は鎮静化した。

8.文武両道を追って一道も得なかった話
https://kakuyomu.jp/works/16818093073520251431

 コメント:
 黒歴史の企画にも相乗りした作品。
 実体験を書いたわけだが、これは黒歴史というにはちょっと茶化しにくいな、と自分で思ってしまった。
 同じ話題でも口調によって反応が変わるように、この作品の文章には「はずかし~www」とノリで反応がしにくい。
 硬すぎる。流石にもう少し砕けた表現にすべきだった。


第5回:「はなさないで」
 何というか物語を思わせる。
 こういう内容を卓越した風景や心理描写、キャラクター性を以てして描けたら、さぞカッコいいだろうなあ……
 他の方のを読むとやられるし、書こうとするも実力もないしで、色々と弱いお題である。

9.持て余す男
https://kakuyomu.jp/works/16818093073761698226

 コメント:
 ボリュームでいうと「終末タスク」に続いて多い。
 個人的に「化け物は化け物にしか扱えない」という価値観があるため、パートナーには同程度にぶっ飛んだ主人公を用意した。
 若干「ざまあ」要素も含んでいるが、当初意図されたものではなかった。


第6回:「トリあえず」
 今回のKACの中で最も謎めいたお題。
 とりま「とりあえず」で良くない? という意見が次々と出てきた。
 解明しようと色々試みた内容が、自分がKACで出した作品の中で一番評判が良いあたり、本当に謎だったのだろう。

10.僕には「トリあえず」が足りない。
https://kakuyomu.jp/works/16818093073946950462

 コメント:
「とりあえず」と読み解いて出した作品。
 自己批判だけは一人前に出来るので、仕上げるのはそう難しくなかった。 
 とはいえ、前向きな結論で書き終えられた作品はそう多くないので、
 自分の考えにも変化が起きているのかもと感慨に耽っていた。

11.謎お題「トリあえず」を解明せよ!
https://kakuyomu.jp/works/16818093074007421417

 コメント:
 自分の中の小さな脳みそをフル回転してこじつけを行った作品。
「トリあえず」がすべての母音を含んでいなかったら多分やらなかった。
 前述した通り、これが自分のKAC最高到達点。人の共感を呼ぶテーマを選ぶ大切さを知った。


第7回:「色」
 こういうのが第1回や第2回に来るのでは? と思ったお題。
 とはいえかなり範囲が広いので、何について書こうと悩まされたのも事実。
 敢えて道が限られているお題を序盤に出して、初心者にトリあえず書くことの大切さを教えてくれたカクヨム様の慧眼には心底恐れ入る。

12.臨終の色彩
https://kakuyomu.jp/works/16818093074128355899

 コメント:
 個人的に一番らしくない作品。
「感傷的になる作品」をテーマに色々な継ぎはぎを行った結果、出来上がった。
 エモは強いなと思った。小説は理屈よりも感情なのかもしれない。

13.桃は
https://kakuyomu.jp/works/16818093074211260924

 コメント:
 赤は情熱とか、白は清純とか、紫は高貴とか、色にも様々な印象があるな、と思ったので
 桃色に対する印象をつないで恋愛と絡めたものである。タイトルがシンプルなのもそのため。
 終盤ありきで作られたもののため、こじつけもそれなりにした。

14.顔色いろいろ
https://kakuyomu.jp/works/16818093074219687938

 コメント:
 7番目のお題が色=虹をテーマにしなきゃという安易な発想から始まった。
 最終的な状況から逆算して考える必要があったため、執筆にはそれなりに時間がかかった。
 出来はともかく勉強にはなった一作。

第8回:「めがね」
 最終回は「めがね」。
 期限が他に比べて短いような気がした。お題がそれなりに簡単なのもそのためだろうか。
 無難に着地すればよかったものを、要らんことをした回。

15.目がない女神にメガネ
https://kakuyomu.jp/works/16818093074333531614

 コメント:
 やらかしたやつ。筆の乗りは良かったのであるが、いくらなんでも悪ノリ過ぎた。
 これでも一回タイトルを変えており、変更前は「めがねぇめがめがみにめがね」だった。
 欲に忠実な作品はチキンレースなのだ。ギリギリまで崖っぷちを攻めることに意義がある。
 崖から落ちたらそれはもうただの事故なのである。 

16.眼鏡について
https://kakuyomu.jp/works/16818093074424679818

 コメント:
 上記作品を作り、明らかにマズったな……と反省し、捻るのはやめて出したもの。
 眼鏡を使っているのだから、最初からこれでよかったのだ。


番外編:
 KACとは関係ないが3月の間に書いていた作品達。

17.間違い探し
https://kakuyomu.jp/works/16818093073432628195

 コメント:
 400文字。KACでお題に従って書いていたのもあって、
 自由にざっと仕上げて出した一作。
 一発ネタであるが、一発ネタが悪いとは限らないのである……

18.脈打つ絡みの喪失
https://kakuyomu.jp/works/16818093073434533051

 コメント:
 どんどんチグハグになっていく作品を書きたかった。
 終盤のグダグダも含め、書いていて楽しかった。

19.☆0でいい夜
https://kakuyomu.jp/works/16818093073623366228

 コメント:
 なんでだ。

 クソ食らえだと思った作品が評価されるのはアイロニーか何かなのか?
 これは新ジャンル作者ざまぁと言ってもいいかもしれない。
 タイトルにするなら「お前は片手間作品だからと言われた拙作、作者が出したどの力作をも上回って無双してしまう」とかか。

20.ダンテの問いかけ
https://kakuyomu.jp/works/16818093074626654710

 コメント:
 3月で最後になる作品。
 アニメで登場してきたキャラクターの台詞でかなり歪まされたよ、という話。
「○○からしか得られない成分がある」なんて言い回しを耳にするが、初代ハガレンアニメからしか得られない成分は確かにあったと思う。
 エンヴィーがアホみたいに強かったり、色々と救いがなかったり、原作とは対の結末に至ったりと、エグみはすごいのだが、
 そのおかげで原作再現の二代目アニメと共存関係が維持されているのである。



 この通り、20作品書いてみたのだが、
 どうなると評判になるのかは、結局のところよく分からなかった。
 多分、あるある・エモ・愚痴あたりをテーマに、人気のタグを付けるの良いんだろうなとは思ったのだが、それにしても作品によってバラつきがある。
 守れていない作品が健闘していたりもする。

 自分の考えで見るに、(少なくとも短編は)下手にテーマとか考えとかを前面に出さない方が良いのだろう。
 物語はあくまで物語だ。楽しく読めないならそれは邪魔だ。
 特に短編においては感情の割合は大きい。そもそも美味しい部分だけスパッと切り抜けるのが短編のメリットなのだ。

 あとは、どこまで「勢い」がある作品に仕上げられるかか。
 自分でビックリするくらいで初めてワンチャンある程度かもしれない。思いついても「想定内だ」と思った作品は、やっぱり伸びなかった。
 それが難しければ、登場人物のキャラ描写がカギになってくるか。
 登場人物に愛着がわかないと繰り返しは読まれない気もする。自分もブラッドベリの「華氏451度」でほんの僅か描かれるクラリスの登場シーンだけ読み返したりするんで気持ちは分かる。
 しかし、自分はこのキャラ描写というやつが特別苦手だ。どんなタイプを描こうとしても、最後には自分語りになってしまうのだ。

 もう少しASMRを聞いて自分を薄めていくことにしよう……

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