• ホラー
  • エッセイ・ノンフィクション

星を待つ人


 職場のビルの一階は一般開放されていて、机や椅子がそれなりにある。

 わたしは空いているどこかへ座り、無地のクリアファイルからルーズリーフを数枚取り出す。
 それから、次回作の設定がつぎはぎに書かれたそれらをぼんやり見つめる。

 新しいシナプスが出来ていないか更新欄をチェックするも、結果は変わらない。

 今日もダメかもしれない。
 落ち込んだピアノの音楽がフロアに流れていたのもあり、だいぶアンニュイになっていく。

 この案ができてからしばらく時間が経っている。
 最初の勢いでさっさと書いていればこんなに苦労はしなかっただろうが、その時にはその時の事情があったのだ。覚えちゃいないけど。

 そもそも、書けたとしてどんな効用があるかは分からない。
 つぎはぎの時は素晴らしく見えたものも集めてみると、意外とこじんまりしてぱっとしないこともある。
 効用も分からなければ、評判なんて更に期待できない。
 最近は落ち込むことが増えて、厭世的な気持ちを鼻をかむように何作も出すことはそんなに難しくはない。

 ここまで固執することに、一切のメリットはない。

 とはいえ、始末をつけたい性分なのは変えようがなく、だからこそ肌寒さを覚えながらじっと紙を見つめている。
 その時が来るまで延々と待っている。

 ふと、星でも見に来てるみたいだなと思った。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する