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ブギーポップは貶せない


 部屋の大掃除をしている。
 一人部屋なので半日もあれば十分終わるだろうと踏んで、
 風呂場やトイレ、台所については、不精の痕跡を全部隠滅した。

 部屋の中も埃を取ったり、不要品を片付けたりとまあ順調に進んだ。

 そして、最後の段取りに入った。
 本棚と段ボールにぎちっと積まれた本の整理である。

 一番厄介だが、一番楽しいところである。自分の趣味嗜好が変わったことがはっきりと分かる機会なのだ。

 本棚には厳選された一軍選手や、直近の自分が読みたいと思った本が集う。
 そこから外れた本は段ボールに格納されるが、ここも熾烈な階層争いが繰り広げられており、現時点では二軍からゴミ出し候補の四軍までがある。

 本棚(一軍)が二軍、三軍に下ることもあれば、四軍が再評価されることもある。その動きがとても面白い。


 さて、ここでようやくタイトルにある「ブギーポップ」が登場する。
 私はライトノベルの定番名著として「ブギーポップは笑わない」を手に取った。
 手に取ってすぐ読んでみた感想は「うーん?」という形で、本棚入りにはならなかった。
 しかし、時期が来ればいずれ面白さが分かるのだろうと思い、本の整理のたびに軽く読み返すこともする。

 そして数年が経ったのだが、そのままになっている。「つまらない」のではなく「not for me(私には合わない)」ということなのだ。

 ある程度の自信を持って言うと、学生の時に読むと「歪まされる」ような文章や設定ではある。
 エヴァのカヲル君や、カウボーイビバップやキノの旅にも通じる、独特で、一見親しげで、でもやっぱり距離のある雰囲気が漂うのだ。
 そういうのって「これがいいんだよ」と思うのが大半だけど、時たま「ずるいなあ」と思う時がある。
 優等生っていうか、隙がないというか、出木杉君を批判出来ないのと似ている。「気兼ねなく任せられる」っていう安心感はあるんだけどね。

 ジャイアンみたいな名作だってある。例えば「とらドラ!」とか。
 生々しい心理描写あるし、キャットファイトあるし、キャラも展開も波乱まみれ。
 隙だらけだが、(少々過剰ではあるけど)青春時代ならではのもどかしい感じは伝わるので「良い!」となった。


 部屋の掃除が終わらないので、ブギーポップは再び段ボールへと戻すことになるが、何となく、この一冊はずっと自室に漂うのではないか、との予感を抱いている……

2件のコメント

  • ご無沙汰しております。
    すごく分かる気がします。
    全く隙がない一作なので、何度も取り出してはめくって、現在進行形の自分に必要な言葉を探す……みたいな、対象になりにくいといいますか。
    じゃ、いつでも入手できるから一旦売るか捨てるか、となるとやはり手放せない。それは違う気がする。
    モニョモニョしてしまう感じ。勝手に唸りまくりました。
  • コメントありがとうございます。
    仰る通り、とにかく「隙がない」というイメージで、完成度が高い、というより「完成している」作品なんですよね。
    もちろん作品の方向性の一つの極致として「凄い」とはなるんですけど、「ブギーポップはいつ読んでもブギーポップだなあ」と思う感じはあります。
    こういうオンリーワンな作品を一作でも書けたら、筆をおいてもいいよなあとは思っているのですが……
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