最近話題の文章生成AIについて。とあるSF小説賞では、AIが生成した小説の投稿が急増して募集を一時停止する事態に至ったとか。試しに私の仕事のようなレビュー執筆にも応用できるのか実験してみましたが、誰もが知る古典ならともかく、世に出たばかりの新作やカクヨムの作品はAIもストーリーを読み込んでいないので支離滅裂なレビューになってしまいました。文章校正なら役に立つのではと、下書きを入力して添削してもらいましたが、本来、英語の出力を日本語で翻訳して表示しているためか、逆に日本語に違和感ができてしまう始末。しかし文章の不備を指摘するように命令すると「この文章だけでは読者に正しく意味が伝わりません」などと教えてくれるので、ある程度の形になっている原稿をさらにクオリティアップさせるツールとしては有用な可能性が見えてきました。まだまだ私の仕事はAIには奪われなさそうで内心ホッとしました。

ピックアップ

投資するほど強くなる! 社畜奴隷の異世界投資ファンタジー

  • ★★★ Excellent!!!

 ブラック上司に酷使されている社畜の服部慧は、ある日、自宅の庭に異世界に繋がる大穴を発見する。異世界でモンスターを討伐することで現金を手に入れた服部は、悠々自適なニート生活を目指し、異世界攻略を始める。

 いわゆる現代ダンジョンものですが、この作品の特徴は、投資を行うことでステータスが上がり、スキルを獲得する点です。

 インデックスファンドに投資すると肉体が強化され、ヘルスケア関連なら回復系のスキルを獲得、情報技術関連なら思考系など、投資する銘柄によって恩恵が変わり、現実世界にも反映されるのがポイントです。

 スキルを獲得したことで面倒な雑務も片手間にこなせるようになり、疲れ知らず、無能な上司をやりこめる姿がスカッとしますね。

 投資でステータスを上げ、鍛えた能力でモンスターを倒し、その報酬でまた投資額を増やし強くなるという好循環に夢が広がります。

 また投資の話をわかりやすく解説しているので、投資に興味はあるけどちょっと難しそうだなと躊躇っている方に是非オススメです。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

戦争の魔王から平和の女神へ! 人型兵器のアイドル再生物語

  • ★★★ Excellent!!!

 大型自律人型兵器「ブラスギア」の反乱によって崩壊した世界。人類は複数の軍事企業が統治するエリアに分かれ復興を進めていた。世界を破滅に導いた「魔王」の現存する三体、ベリアル、ビュレト、アスモダイを封印から解き放ったのは、プロデューサーと名乗る謎の男だった。彼は三人にアイドルを目指さないかと持ちかけ……。

 戦闘用AIをアイドルとしてスカウトするという荒唐無稽な設定が斬新です。

 アイドルに相応しい美少女の姿に擬態したベリアル、ビュレト、アスモダイ。アイドルなんて概念すら初めて知る彼女らだが、超高性能AIだけに学習はお手のもの。しかし完璧なパフォーマンスを見せても観客の心には響かない。それは彼女たちが人々を楽しませようという気持ちが欠けているから。

 人間よりも優れていると思っていたことが自分たちの驕りだと気づいた三人が、スラム街の飲食店で働きながら人間を学んでいく光景が微笑ましく、そこで出会う人々に応援されながらアイドルとして成長していく展開が感動的なのです。

 戦争の兵器として生まれた彼女たちが今度は平和の象徴へ。新しい未来の先駆けとなって人々と喜びを分かち合うアイドルの姿が眩しいです。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

美味しい魔法を召し上がれ! 孤独な二人のちょっと不思議な共同生活

  • ★★★ Excellent!!!

 異世界に住む魔法使いの少女ミアは、魔法の実験中に誤って現代社会に住む男子高校生の東雲怜の家と空間を繋げてしまった。オール電化の怜の家を目にしたミアは、怜に魔法を教える代わりに、怜の使う科学を教えるように頼み込む。かくして二人の共同生活が始まった。

 学校のチャイムが昼を告げる中、フタを開けると加熱される魔法の弁当箱に入っているのは、ちょっと不思議なミアの手料理だ。

 おこげの入ったハンバーグと目玉焼きのロコモコ丼
 酢飯だけでなくおかずまでも巾着に入ったいなり寿司。
 油そばなのに何故か上に乗るきつねあげと玉子天ぷら。
 ウインナーのタコとカニとサンマが踊る焼き魚弁当。

 こちらの世界の料理をあまり知らないミアが作るものは、常識外れで奇妙なところもあるけれど愛情たっぷりなんです。

 戦争で天涯孤独になったミア、両親が事故で昏睡状態にある怜、ふたりとも孤独な境遇だからこそ誰かと一緒に暮らして、誰かのために料理を作るという当たり前の生活のかけがえなさが身に沁みる。

 ちょっぴりダークな世界観ですが、ピュアな二人を応援したくなるボーイミーツガールです。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

農家も楽じゃない! 農家になる前に知っておくべきいくつものこと

  • ★★★ Excellent!!!

 調理師から一念発起して白ねぎ農家に転職した作家の夢神さん。農業はまったくの素人からのスタートでしたが、5年目に入った現在では収穫も安定し、転職は大成功だったと語ります。

 しかし、現実の農家の生活は、私たちが想像するようなスローライフとはほど遠いもの。

 1月から12月まで植え付け予定がビッシリ。夏場は猛暑の中での草むしり、冬場は除雪しながらの収穫作業。毎日ネギの成長に合わせて畝上げをし、害虫や病気に注意しても、台風や水害が発生すれば収穫が激減してしまいます。

 唯一の喜びは、頑張った分だけ預金が増えていくこと。新規農家の頃は貯金が減るばかりで、不安でいっぱいだったといいます。

 これから農業を考えている人に向けて、実体験を元にした補助金の使い方、土地の借り方、地元の人との付き合い方など、役立つアドバイスが満載です。

 自分たちが普段食べているネギ1本1本に農家の苦労があり、改めてありがたみを実感しました。白ねぎ農家の良い点も悪い点も真正直に描いた仕事人のドキュメンタリーと言えるでしょう。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)