まだまだ暑いですねぇ。日々喫茶店に出勤しているわたくし、今年も見事な部分焼けを果たしておりますよ。
ともあれ夏はまだもうちょっと続くんじゃよーということで、この季節に欠かせない花火・アウトドア・怪談・ビールの4ワードを含む作品をご紹介させていただきます! ええ、夏っぽいことをひとつもこなせなかった無念は置いておきましてね……
それから宣伝! カクヨムさんの公式連載として『“すごい創作術”を駆使したら、新人賞は取れるのか!?』という記事を連載させていただいております!
ざっくり内容を説明させていただきますと、すごい人たちが書かれた創作術を駆使して公募で賞を取れる小説を書く! というなかなかに無謀な企画。
ただ小説を書くのでなく、内容を構想し、キャラを作り、ストーリーを構築して本文へかかるまでの順序や方法を丸っと説明し、さらに敏腕編集者の「編集者としての思惑」まで添えた豪華版となっておりますので、ぜひチラ見してやってくださいましー。
あれこれ歪んだオタク男子と、転校して別れ別れになる幼なじみの才色兼備女子。ギタリストだったサラリーマンと、元彼女。余命半年を宣告された妻と、その残された時間に向き合う夫。花火を軸に3つの愛の有り様とその行方が語られる……。
高校生・社会人・夫婦が綴るこちらの恋愛ストーリー、あらすじの通り3編とも花火をテーマにしたものとなっています。
おもしろいのは3編の主人公とヒロインが同一人物だということ。
ふたりが辿る人生の岐路を象徴するものが花火——この仕掛けにも魅せられるわけですが、それぞれの立場と状況の違いが生み出す関係性、その距離感が実に趣深いのです。「あー、若いな!」から始まって、「いろいろ難しいよなぁ」に繋がって、ほろ苦くもあたたかいエンディングへ至る。
オムニバスという“時間と舞台を切り取った”物語形態の中で、ブレることなくふたりを追いかけていくからこその妙がそこにはあります。
いい話が読みたい! そんなときにこそ開いていただきたい素敵な物語です。
(「夏といえばコレでしょ!!」4選/文=高橋 剛)
FZ750に山盛りの荷物を積んで、少女は北海道を駆け巡る。気ままなソロツーリングの中で起こる小さな事件の数々! そして行き会った人たちとのあたたかな交流! バイクと人が織りなす、北の大地の旅情劇。
基本的にゆるやかなバイク旅のお話なのですが、けして順風満帆でないところがリアルなのですよ。機嫌の悪い相棒、襲い来る大風、その他いろいろな困難。
でも、そういったハプニングをポジティブに乗り越えていく彼女の様に、日常を抜け出して臨んだままならない旅の時間を全部楽しんでやろうという心意気が感じられていいのですよねぇ。彼女がそんな人だからこそ、読者も彼女が行く先で出遭う人たちや勝景、北海道ならではのグルメをいっしょに楽しめる。
加えて細やかな情景描写ですよ。読むだけで目の前にその図が拡がる文章の鮮やかさが、格別な旅情を味わわせてくれて。それはもう目を奪われずにいられないのです。
すぐそこにある、心躍る非日常。それを味わいに出かけたくなる一作です。
(「夏といえばコレでしょ!!」4選/文=高橋 剛)
誰かが体験したささいな怪談、その語りを連ねたショートストーリー集。
あらすじもタイトル通りにミジカくまとまりました。なんでもない日常の中で遭遇した不可思議なお話を綴ったこちらの作品、魅力は「良質なテンプレート」、これにつきます。
怪談というものは、出遭った人がその話を持ち帰らないといけません。つまり語り部が殺されてしまっては成立しないものです。だからこそ、お話にオチがついてはいけないわけですよ。そのテンプレを正しくなぞることで「あれって結局なんだったんだろう?」というモヤっと感が生み出され、余韻が生まれるわけですね。
そして、「なんだったんだろう?」を演出する背景設定を持つお話がちりばめられているのもすばらしいですね。ふいに遭遇する怪異も恐いのですが、「もしかしてあのことが関係しているのでは?」があるお話も恐い。さまざまな様相の恐さが詰まっているから、この作品はもれなく恐い!
1話を読み終えるのに3分は不要。極上のモヤっと感をさくっと味わっていただけましたら。
(「夏といえばコレでしょ!!」4選/文=高橋 剛)
酒を嗜む人なら一度は言ったことがあるのではなかろうか、「取り敢えず、ビール」。ビールをこよなく愛するninjinが語るビール四方山話。
最近はお酒を飲まない人も増えているとのことですが、好きな人は毎日飲むもの。その好きな人……それもビール好きな著者さんによる「毎日」のお話がこちらとなります。
ビールの蘊蓄を語ることなく、持ち上げて語ることもない。なぜならビールは著者さんにとって、かけがえないけれど何気ないものなのですよね。なにがあっても離れることのない人生の供連れ。そんな深い心情と強い愛情が、ご自身を描いた小話から感じ取れるのですよ。
しかもですね、著者さんはビールを語る端っこでほろっと、誰より大切な奥様を「ビール」と例えられるのです。読む側はもう酔わされるしかありませんね。
時には飲み過ぎてやらかしたり、ビールならぬ発泡酒にがっかりしたりもするけれど、今日も元気に飲んでいく。読めば「とりあえず」元気になれること間違いありませんよ!
(「夏といえばコレでしょ!!」4選/文=高橋 剛)