先日Nintendo Switch用ソフトとして発売された『世界のアソビ大全51』。将棋やバックギャモン、ポーカーといった定番のゲームからマンカラやヨットといった国内ではあまり知られてないゲームまで世界中のアナログゲームが楽しめる。最新のゲーム機で昔からあるアナログゲームを遊ぶというのは少し変な気もするが、これが楽しいのである。やはり古典と言われるゲームは現在まで残っているだけあってなかなか奥深い。
というわけで今回はそんなアナログゲームの魅力を存分に引き出す4作品をご紹介。異世界を将棋で無双する男から諸葛孔明にTRPGを学ぶJKに毎日様々なボードゲームをする喫茶店の日常など、新しい世界を広げてくれる作品が目白押しだ。

ピックアップ

言語も文化も違えど通用するもの……それが将棋!

  • ★★★ Excellent!!!

互いに金を賭けて将棋を指す裏の世界のプロ棋士、それが『真剣師』。本作の主人公、榊竜馬もそんな真剣師の一人。ある日代打ちとしていつものように大勝負に勝った竜馬だが、相手の八百長を断ったからか、あるいは態度があまりにも無礼すぎたからか、数日後トラックにはねられて殺されてしまう。

これで死んだかと思った竜馬は例によって異世界に転生してしまうのだが、彼にはチートな能力もなければこの世界の言葉すらわからず、野垂れ死にまったなしだ。しかしこの世界には彼にとって有利な条件が揃っていた。なぜか将棋が流行っているのだ! 子供の頃から将棋の腕一本で生きてきた竜馬にとってこれは何よりのチート!

かくして始まる異世界での真剣師のサクセスストーリー。

とことん礼儀知らずで言葉が通じなくても無理やり自分の意志を押し通し、将棋の強さこそが全てと考える竜馬は紛れもない人格破綻者。しかしこの破綻者が言葉も通じぬ相手を関西弁で罵りながら次々打ち破っていく姿が実に小気味いい。

ルールは一緒でも戦型の名前が『仮面舞踏会』と異世界風にアレンジしてあったりするのもいい味を出していて非常に楽しい一作だ。

(「アナログゲームの世界」4選/文=柿崎 憲)

孔明×TRPG×女子高生の超異色ラブコメ!

  • ★★★ Excellent!!!

好きな男子の気を惹くために、TRPGを学ぼうとする女子高生の劉アン子。しかし、TRPGというのはゼロから始めようとするにはなかなかハードルが高い。そんなアン子の元に現れたのがスマホアプリによって偶然召喚された諸葛孔明!

孔明のいた時代にはTRPGなんて当然なかったのだが、現代の知識を手にした彼はあっという間にTRPGの何たるかを学び、アン子に指南。そして彼女の恋を成就させんと策を巡らせる!

というわけで全くの初心者であるアン子のために、孔明が一からTRPGのやり方を教えてくれる本作品。キャラクターをどう設定するべきか、GMって何をすればいいの、そもそもルールブックが高くて買えない……などなどの最初のつまずきやすい部分から解説し、しっかり解決してくれる。

ただルールを解説するばかりではなく、最初は孔明とだけプレイしていたアン子がクラスメイトたちともプレイしてTRPGの楽しさにハマっていく様子も上手く書けているし、孔明以外の三国志キャラクターも徐々に混迷を極める恋愛事情も面白い。

読んでいく内にTRPGと三国志について詳しくなれること請け合いだ。
しかし孔明が『新クトゥルフ神話TRPG』の紹介をするっていうのはなかなかにシュールだ……。

(「アナログゲームの世界」4選/文=柿崎 憲)

放課後はお菓子とお茶とボードゲームを

  • ★★★ Excellent!!!

親の手伝いで喫茶店の店長代理をする大城普吉。しかし店は全く流行っておらず、普通は客入りが良い時間でも閑古鳥が鳴いている。そんな彼に幼馴染である桃園瑞穂がある提案をする。お店をボードゲームカフェにしてみるのはどうかと。かくして始まるゲームカフェの物語。相変わらずお客は全然入らず、毎日店員と色んなゲームばかりしているがこれはこれで……。

そんな普吉と店員たちが毎回アナログゲームを繰り広げる本作品。主にメインで扱われるのは将棋。それもただの将棋ではなく『古将棋』という今ではめったに指されなくなった特殊な駒が多数登場する将棋だ。「獅子」や「酔象」、「火鬼」といった聞き慣れない駒が多数登場し、普通の将棋とは全く異なる戦略を見せてくれる。
他にもカードゲームが出てきたと思ったら、羽根つきや釣りなどのアウトドアな遊びも出て来るし、最近流行りのリアル脱出ゲームなんてのも登場する。
一話ごとにゲームに対する様々な薀蓄が紹介されるし、それといっしょに出てくるお菓子とお茶の美味しそうなことといったら!

一話完結で読みやすく色んなゲームについても詳しくなれるので、物語を楽しむだけではなく、知識欲を満たすという意味でもおすすめです!

(「アナログゲームの世界」4選/文=柿崎 憲)

読んでる内に自然とゲームがプレイをしたくなる巧みなレビュー集

  • ★★★ Excellent!!!

最近はボードゲームカフェもあちこちにできたりして、静かなブームとなってるボードゲーム。適度に運の要素が絡まり、ルールが簡単なものも多いので、初心者でもすぐに楽しめるというのがボードゲームの嬉しいところ。しかし、実際に始めようとしてもたくさんあって何を選べばいいかわからないというケースも多いでしょう。

そんな人のためになるのがこのエッセイ。ボードゲームを愛する作者が実際にゲームを遊びその内容と醍醐味を紹介してくれるのだ。
ワイワイ楽しめるパーティーゲームから一人用のゲームまで紹介されるゲームは盛りだくさん。

丁寧でありながら気さくな感じの文章でルールだけではなく、そのゲームにおける人間心理の変化なども教えてくれて、紹介される作品がどれも面白そうに思えるから凄い。

また、それぞれのゲームの長所を見抜き的確にレコメンドする技術は、カクヨムで他の人の作品にレビューをするときの参考にもなるかもしれません。

面白いゲームを探している人だけではなく、上手いレビューの書き方が気になる人も是非ご一読を!

(「アナログゲームの世界」4選/文=柿崎 憲)