言語も文化も違えど通用するもの……それが将棋!

互いに金を賭けて将棋を指す裏の世界のプロ棋士、それが『真剣師』。本作の主人公、榊竜馬もそんな真剣師の一人。ある日代打ちとしていつものように大勝負に勝った竜馬だが、相手の八百長を断ったからか、あるいは態度があまりにも無礼すぎたからか、数日後トラックにはねられて殺されてしまう。

これで死んだかと思った竜馬は例によって異世界に転生してしまうのだが、彼にはチートな能力もなければこの世界の言葉すらわからず、野垂れ死にまったなしだ。しかしこの世界には彼にとって有利な条件が揃っていた。なぜか将棋が流行っているのだ! 子供の頃から将棋の腕一本で生きてきた竜馬にとってこれは何よりのチート!

かくして始まる異世界での真剣師のサクセスストーリー。

とことん礼儀知らずで言葉が通じなくても無理やり自分の意志を押し通し、将棋の強さこそが全てと考える竜馬は紛れもない人格破綻者。しかしこの破綻者が言葉も通じぬ相手を関西弁で罵りながら次々打ち破っていく姿が実に小気味いい。

ルールは一緒でも戦型の名前が『仮面舞踏会』と異世界風にアレンジしてあったりするのもいい味を出していて非常に楽しい一作だ。

(「アナログゲームの世界」4選/文=柿崎 憲)

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