世界的に辛い時期で、みなさまもご不自由な毎日を過ごされているものと思います。しかしながら、こんなときだからこそ文章の発信と受信を密にして、心を豊かに保って参りましょう!
そんなわけで、私も日本の片隅より新作レビューを発信させていただきますよー。いつも通りにテーマは「みなさまに出逢っていただきたい作品」! そしてサブテーマは「読み手の方にも書き手の方にも楽しんでいただける物語」です! まあ、ようするに全方位にオススメしてやるぜーって感じですね。
と、ゆるやかにざっくりまとめさせていただきまして、レビュー本編へ!

ピックアップ

5人の女が織り成す「絶望」の一幕

  • ★★★ Excellent!!!

 揺り起こされた“わたし”は、4人の女性と共に密室へ閉じ込められていた。そして、どこからか聞こえてきたアナウンスはとんでもないことを告げる。この部屋からの脱出方法はただひとつ。恋人同士になれた者だけがこの密室から生きて解放される……。

 ちなみに5人全員、普通の女性です。つまり、いきなりデスゲー+無理ゲーから物語が始まっているわけで、実にキャッチーですねぇ。

 そしてデスと無理を加速させるゲームルールですよ。これがキャラクターを追い立てて、追い詰めていきます。デスゲーものはこの部分の「いやらしさ」が鍵になるものですが、著者さんのいやらしさのさじ加減は絶妙のひと言! ルールに脅迫されたキャラ同士が自分の手で関係性をかき乱していく有り様、その惨さをじわーっと楽しませてくれるんです。

 過程がしっかり積まれていればこそ輝く“驚愕”のエンディングと最高に最悪な読後感、ずいっとおすすめです!

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

新米講師、謎多き学び舎へ着任す!

  • ★★★ Excellent!!!

 神奈川塾なる学習塾のバイト講師となった門出窓太は、初出勤日に早速室長から仕事を命じられる。まずは壁を埋める合格実績の張り紙をすべて剥がすこと。その次に、これを全部剥がす理由についてを秘密裏に解き明かすこと。

 こちらの日常の謎、導入が実に見事なんですよ。塾の名前の由来(本編でご確認を)から入って、主人公の窓太さんや彼と関わるキャラの人となりを織り込んで、謎解きへ向かう。

 書き手の方には実感していただけるものと思いますが、説明を伴うだけじゃなくて動きの少ない導入をおもしろく書くって、凄まじく難しいことですよね。それが絶妙なバランスでまとめられていることで目を惹きつける内容を成していますし、ここから「始まる」ドラマを匂わせてもいるわけです。著者さんのうまさとずるさ、本当に高品質ですね!

 物語は始まったばかりですので、今から本格的に動き出す物語とキャラのドラマ、ぜひとも追いかけていただきたく。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

その男子、見かけはアレでも名探偵です!

  • ★★★ Excellent!!!

 大学付属の名門私立高校、天保学園の1年生である葉山京は、補修の常連として今日も補修への出席を余儀なくされていた。そして長い補修をなんとか切り抜けた彼女は、飢えに突き動かされるままいい匂いのする調理室へ向かい――男子生徒なのに女子用のリボンをつけた2年生、桜木恵都と出遭う。

 いちばんの注目ポイントはキャラクター性です! 冒頭で主人公の京さんの、どちらかといえばテンション低い個性が押し出されるくだりは惹かれましたねぇ。心情描写だけに頼らず状況描写や行動描写を効かせて、しかも興味深いエピソードとして仕立てあげられていて。それがあればこそ引き立つんですよね。そんな彼女が、おかしな奴だけどそれ以上に切れ者な恵都くんに興味を引かれてしまう過程が。

 合縁奇縁なんて言葉がありますが、物語の中では必然という名の都合で押し通されがちなものです。だからこそ、きちんと合縁且つ奇縁として見せてくれる作品は希有なのです。

 この世にも希なる縁の行方、いっしょに追いかけていきましょうー。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

私を三国志遺跡に(自力で)連れてって!

  • ★★★ Excellent!!!

 超人気アクションゲームで三国志にハマった著者さん、ついには大手旅行社の曹操墓参りツアーに応募するも人数が集まらず不催行! しかし、悲しみに暮れる著者さんへ、許昌に済む日本の人から案内するよとのメールが入る。中国のことをよく知らず、言葉もわからない著者さんの三国志遺跡巡りの旅、そのすべてはそこから始まった。

 このエッセイのなにが素敵かって、「好きなものを実際に見て、そこへ宿るなにかを感じたい」、その熱の高さです。聖地巡礼などと言いますが、そもそもなぜ聖地へ向かうのか? という門外の疑問に、著者さんはばしーっとアンサーを叩きつけてくださるのですね。

 そして内容のほう、もちろん三国志ネタいっぱいなのですが、遺跡へ向かう旅行に必要な知識も語られていますので、中国旅行記としても楽しめます。中でもガイドさんについてのお話は、あれこれ収まったら中国へ行ってみたいーという方のご参考になるはず。

 情熱ありネタあり人もありな一作ですよー!

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)