12月に入った途端、体の調子が悪くなって大変な“そろそろ”おじいさんです。
今月は新作紹介ですよー! なので、ぜひみなさまに出逢っていただきたい作品を4作、選んできましたとも! ……テーマが不変なので文言がいつも同じなのはご容赦くださいましね?
ともあれ全体の感想としましては、「うまさ」が際立つ新作が揃いました! になります。出逢い仲介業者であるところの公式レビュワーとしては実にいい仕事ができたなと思っていたりしますので、どうぞよろしくお願いいたしますー。
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高齢者の5人にひとりがゾンビと化すようになった日本。その新たな天敵による災害へ対するのは自衛隊や警察ならず、プロフェッショナルの市民団体である。生物学を専攻する大学3年生・平林義昭は、夏休みを利用して被災地ボランティアへ赴き……ゾンビ殺しのプロたちに見いだされた。
設定、いいですねぇ。ゾンビは戦闘力高いだけじゃなくて感染力まで持ってる、絶対倒さないといけない敵です。でもゾンビの見かけは高齢者そのままで、もともとはどなたかのご家族。感情、倫理、法律、あれこれが絡みあった末に市民団体が仕末を請け負うようになりました。これを端的にまとめられる構成力はすばらしいのひと言。
加えて主人公の義昭くんは目の前で、ゾンビ化した祖父を市民団体に処理された経験があるわけです。そんな彼が対ゾンビの最前線へ行く――ドラマが生まれないはずがないんです!
筆力、ネタ力、構成力、どれも文句なしで期待値も激高。これはもう推さずにいられません!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)
薬局勤務の薬剤師である唐柴 蓮。彼は日々訪れる患者さんを相手に苦労し、病気や医療制度について思いを巡らせる……。
というわけでこちら、薬剤師さんによる半自伝的(あらすじより)作品となりますが。いつもは患者サイドから感じてる私たちのあれこれが薬剤師にとってどんなものなのか、立場の違いから生まれるズレっぷりは実に興味深いところです。いや、患者の理不尽ってのを思い知りますね、というのはともあれ。
一般人には今ひとつ理解できてない医療というものの効力や問題を、医師と患者とを繋ぐ薬剤師の立場から語ってくださってるわけですが、そこに留まらないのが見どころです。病院や薬局、医療メーカーの形態というものから生じる問題あり、従事する“人”から生じる問題あり、ジェネリックを巡る問題あり……語られるドラマは同時に知識伝授や問題提起でもあって。
読み物として楽しませてくれるだけじゃなく、今一度“薬”を考えるきっかけにもなる良作ですよ。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)
女性である著者さんが女性アイドル推しとしてアイドルを見て、感じたことを語るエッセイです。
視点が恋愛ではないだけに、クールな切り口になってるのはおもしろいところですが、なによりファンという立場からの論は興味深いですねぇ。結論自体は男性ファンが辿り着くそれと変わらないんですよ。でも、過程が違うんです。そしてアイドルとの関係性についても、結果として男性ファンと同じように保ちながら、その心情は大きく異なっていて。女性だからこそ、同じ女性であるアイドルをあたたかく思いやってあげられるし、逆に冷静な目で切ることもできる。
結局のところ女性ファンと男性ファンの違いはなんなのかといえば、きっと感情の置き所の違い――心の距離感なんだろうなぁと思うのですが、こうして論じてもらっていればこそ、昨今の“アイドル文化”に「思う」こともできるわけです。
アイドル好きの方もそうでない方にも読んでみていただきたい論で、心情ドラマです。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)