人間生きていると、たまに三国志を無性に読みたくなるときが来る。漫画でも読んだし、小説でも読んだし、ゲームもやったし、話の内容とかも大体覚えているのだけど、それでもなぜか三国志を読みたくなるときが来るのだ。そういう魔力が三国志には秘められている。最近ではライトノベルでも『三国破譚 孔明になったけど仕えた劉備は美少女でゲスでニート志望だったの事』や『真・三国志妹』など三国志を扱った作品(カクヨムでも一部読めます)も登場しているし、やっぱ三国志は皆好きなんだよね! じゃあ三国志特集やってもいいよね! というわけで今回は強引に三国志特集です。上手く本編を翻案したものから、有名な故事から生まれたとんでもない一作に、おそらくほとんどの人が読んだことのない「続編」を現代語訳したものまで、様々な角度から切り取られた三国志の世界をご覧あれ!

ピックアップ

三国志を知らない人はまずこれをどうぞ!

  • ★★★ Excellent!!!

現代でも不朽の名作として知られる三国志だが、その長大さに読む前からつい圧倒されてしまい、なかなか触れる機会がなかったという人も少なくないだろう。

そんなあなたに薦めたいのが、こちら『コミカル三国志』である。
まず砕けた文章で話がサクサク進むので大変読みやすい。
また三国志を読むハードルを上げる理由の一つ「キャラが多すぎて混乱する」についても、それぞれの特徴を誇張して書きつつ、地の文で上手く作者の所感を交えながら描写しているので、しっかり区別がつきやすく、誰が重要人物で誰がそうでもないというのがはっきりわかるのも嬉しい。

基本的に軽いノリで書きながらも、主人公である劉備をただの良い人ではなく、ちょっぴり腹黒い裏のある人物として書かれているのも個人的には好みだ。

それでいてストーリーの内容は、多くの日本人の三国志入門書である吉川英治と横山光輝の作品を下敷きにしているため、さっと読むだけでも三国志という物語の大枠を掴みとることができるという大変ありがたい一作なのだ。

物語の第一部は下邳での曹操と呂布の戦いという三国志前半の見せ場までが書かれており、三国志に興味を持ったという人の入り口としては絶好の一作と言えるだろう。
第二部も現在連載中だが、まだ物語は半ば。孔明の活躍するところまでは是非続けてほしいところだ。

(あなたの知らない三国志4選/文=柿崎 憲)

斬られるか馬謖!? 泣けるのか孔明!?

  • ★★★ Excellent!!!

「泣いて馬謖を斬る」。

世に名軍師として知られる諸葛孔明が、自らの愛弟子である馬謖が軍令に違反した際に、泣く泣く彼を処刑することでルールとケジメの大切さを世に知らしめたという、三国志発のエピソードである。

だが、本作の馬謖の首は斬れない。
なぜなら硬いから。
そんな異常に硬い馬謖を孔明があの手でこの手で斬ろうと悪戦苦闘する本作品。

言ってしまえば出落ちであり、一発ネタではあるのだがただの一発ではない。孔明が様々な手段を模索するうちに、話のスケールはどんどん拡大。馬謖も何やら硬いとか硬くないとかそういう部分を超越した存在に変じていき、気が付けばコズミック規模の壮大な物語として、読者を想像もしない地平へと連れて行くという強烈な一発なのだ。

きっとこの故事を残した昔の中国の人も馬謖が後世こんな扱いを受けるとは予想だにしなかったであろう。
上記のエピソードさえ知っていれば(別に知っていなくても)問題なく楽しめる話なので、三国志には興味がないと言う人も気にせずお楽しみください。

(あなたの知らない三国志4選/文=柿崎 憲)

史料的価値の高さならカクヨム一!

  • ★★★ Excellent!!!

三国志を初めて読んだ際にこのように思ったことがある人も多いだろう。

「え、蜀負けるの?」

そう、蜀は負けるのである。っていうか三国全部滅びて晋とかいう知らない国ができるのである。そういや世界史の授業ではちょっと寝てる隙に、いつのまにか隋とか唐が台頭してたな……。

史実に即したお話なんだからそこに文句を言ってもしょうがないのだが、それでも不満を言いたくなるのが人の性。
そこで「せっかくの物語なんだからもうちょっと楽しい結末になってもいいじゃん」と思ったとある作者が明代に書いた「三国志後伝」を現代語に超訳したのが本作品である。

劉禅が魏に降伏してついに蜀は滅んだ。だが、その遺臣たちは漢王朝の復興を望み、各地に散らばっていた。
やがて匈奴の地に集結した彼らは、劉備の孫・劉淵を王として西晋と戦うことになる。

散り散りになった漢の遺臣が晋を打倒せんと一つに集まろうとする序盤の展開は三国志というよりも水滸伝っぽいが、その後は八王の乱や永嘉の乱などの歴史の大きな流れに沿って虚実織り交ぜながら物語は展開されていく。俺が世界史で寝ている間にこんなことが起きていたのか……。

しかし、内容以上に注目すべきは本作の史料的価値だろう。
そもそも本作は存在自体あまり知られていない。仮に存在を知って読もうとしても置いてある図書館はほんのごく一部。
ようやくたどり着いたとしても訳されたのが江戸時代だから古文が出来ないとまともに読めやしない。

そんな読むまでに何重にもハードルがあった幻の作品を、作者の河東氏は丁寧な注釈付きで現代語に訳しどこでも誰でも読めるようにしてくれたのだから、ただただ頭が下がるばかりである。
河東氏に感謝をしつつ誰も知らなかった三国志の世界を堪能しようではありませんか。

(あなたの知らない三国志4選/文=柿崎 憲)

英傑たちの意外な一面がここに

  • ★★★ Excellent!!!

三国志の時代から約250年後、「劉宋」の人・劉義慶が編集した「世説新語」を現代語訳したのが本作品。

三国志のスーパースター曹操を皮切りに、その息子の曹丕、蜀の軍師諸葛孔明。
その孔明を破った司馬懿を始めとする司馬一族、登場が末期なせいで世間的な認知度が低かったりする鍾会や羊祜など、三国志に登場する様々な人物のエピソードが数多く紹介されています。

曹操が袁紹と一緒に花嫁を盗もうとした話や、司馬懿と郭淮の心温まるエピソードなど、三国志本編では扱われていない話が盛りだくさん。
個人的には「鶏肋」で知られる楊脩のエピソードがやたらと充実しているのが楽しい。
ちょっとした小話集であり、一つ一つのエピソードは短くサクサク読めるので、三国志ファンにはオススメの内容です。

後半では、三国志以降の西晋や五胡十六国の人物のエピソードも紹介されており、馴染みがないので不安だという方もいるかもしれませんが、登場人物やその背景を丁寧に解説しているので、予備知識が無くてもさらりと読めます。
タイトルにデイリーとあるように毎日更新されているので、まとめて一気に読むのではなく、ちょっとずつ読み進めて日々の楽しみにするのも有りでしょう。

(あなたの知らない三国志4選/文=柿崎 憲)