今回は「心の脇腹を抉る」をテーマに、設定や内容に意外性を備えた3作をご紹介します。
意外性は読者の目を引っかける鋭いフックになります。ましてや冒頭にしっかりそれがしかけられていれば、読者の心はもうほとんど釣り上げたも同然です。もちろん、私のような下読みのおっさんの心も釘づけです。……と、いうのはさておきますが、カクヨムという間口の広い場だからこそ出逢うことのできる「意外」を含む各ジャンルの逸品。ぜひともお楽しみくださいませー。

ピックアップ

書店は戦場です! とあるラノベ担当さんの奮戦記!

  • ★★★ Excellent!!!

こちら、書店でライトノベル担当を経験された著者さんの奮闘を綴ったエッセイです。

カクヨムにいらっしゃってくださるみなさま、そして私たちのような出版関係者にとっても最重要拠点である書店の裏で、担当さんがどれだけいろいろなことを考えて行動していらっしゃることか! 
そして書店という場がいかに繊細で残酷な理に支配されているものか! 

そんな知られざる真実がやわらかい文調で赤裸々に語られていくんです。
それだけでも感心しちゃいますし、知らない世界をのぞき見る楽しさを得られるわけですが……

著者さんの担当者としての目利きっぷりと、それを支える観点までもが見えるのは実に興味深いところです。プロアマ問わず、出版を意識すれば「売れるものとはなにか」を考える必要がありますから、こうした最前線の状況やその最前線に立つ担当さんの目線、ぜひとも学んでおきたいところですからね。

お仕事系読み物として、出版系資料として、二方向からぐぐいと推させていただきます。

(心の脇腹を抉る 3選/文=髙橋 剛)

まちがいメールから始まる宇宙人との交流

  • ★★★ Excellent!!!

買ってもらったばかりのスマホに届いた謎のメール。
「M1の会合にいく?」というだけの内容で、当然意味不明。受信者である“みはる”がまちがいメールだと返信すると、返ってきたのは“宇宙人”からの謝罪メールだった。

そこからふたりのメールによる交信が開始するんですけど、この作品、「距離」っていう要素を実にうまく魅せてくれるんです。

顔も知らない、どこにいるかもわからない、でも確かに繋がっていて、だからこそみはるさんは現実世界では口にできないことを吐露できる……そんな関係が続くのかな? と思わせておいて、みはるさんは宇宙人さんを一方的に発見しちゃうんですよ! さらには遭遇しちゃったりも。

光年単位だったはずの距離を一気に越えて、手を伸ばせば届く距離に現れてしまう宇宙人さん! いや、とにかくふたりの距離感が気になってたまらないわけです!

恋愛ものとしても、キャラクター小説としても、思いっきりおすすめの一作です。

(心の脇腹を抉る 3選/文=髙橋 剛)

女刑事にとってもっとも遠い場所――それは土俵!

  • ★★★ Excellent!!!

京都府警捜査一課に所属する女刑事、神園薫(39歳)は、大相撲京都場所の土俵上で起きた大関殺害事件を捜査すべく土俵へ足を踏み入れ、女人禁制の掟に阻まれる。
死体をまともに検分することもできぬまま、事件の解決を目指すことになった薫だが……。

最近、出版界でも大相撲をネタにしたミステリが話題になったりしてますが、こちらもその大相撲ミステリジャンルの一作です。
なにより注目したいのは、古いしきたりや星を取り合う力士たちの感情が交錯する土俵を中心に据えて、そこに「女性」というインクを一滴投下したこと。

たったそれだけで物語はシニカルに染め上げられ、ある意味で被害者不在の殺人事件という、得も言われぬ混沌を生み出すわけです。

現在連載中なので事件の真相は気になりますが、描き出した“相撲×女性”の図式をどう畳んでくださるかは超気になりますね! 
みなさまも私とごいっしょに心躍らせましょうー。

(心の脇腹を抉る 3選/文=髙橋 剛)