神崎茉莉也は舞台に上がる

夢中になれるものがない。
日々を無為に過ごしていた幸村颯斗は、中学3年生のとき、学芸会での演劇部の舞台に感化され、初めて自分がやりたいことを見つけた。

――自分を変えたい。

颯斗は、高校から演劇部に入ることを決意する。
同級生の勧めで入学した天ヶ崎高校の演劇部は、総勢四人の小規模な演劇部。
部長の峰岸琴美。副部長の川嶋信二。二年生の大和恵、二宮弘子。
実力者ぞろいだが……ゆえに、初心者にとってはハードルが高く、なかなか部員が集まらなくなっていた。
そんな演劇部で、颯斗は一人の少女と出会う。

神崎茉莉也。

恥ずかしがり屋で、引っ込み思案で。それとは裏腹に強い熱を込めた瞳。強い意思。
颯斗は茉莉也に興味を抱き、影響されていく。
憧憬。好意。劣等感。
仲間であり、目標であり、同時にコンプレ…続きを読む