高校演劇部に入部した気になれる

生身の役者が演じる舞台を観るという習慣を、日本ではあまり持たない人が多いのではないのだろうか。何しろチケットが高い。気楽に「ちょっと興味あるから見てみよう」などとはなかなか思えない価格設定だ。

このお話の主人公は、高校から演劇を始めることになった男女二人である。彼らが演劇部に入部してから発声や舞台上での立ち居振る舞いなどを学んでいく過程が丁寧に描かれているので、なるほど舞台俳優というのはこういう具合に作られていくのか、と読者も役者修行の疑似体験ができるようになっている。

それは高校生のことであるから、恋愛などもあるだろう。

部員の少なさもあり、初舞台でシェイクスピア劇の主役(結構無茶だな!)を演じることになった新人二人は、無事に大役を務めることができるのか。個人的には、シェイクスピアの先に待っているらしいチェーホフに大いに期待している(シェイクスピアも興味深いけどね! 好みの問題だから)。見事成長した彼らがそこまでたどり着けるのかどうか、どきどきわくわくしながら見守りたいと思う。