とても完成度が高い作品だと感じました。現実と夢、主体の入れ替わり、視点の撹乱が巧みに構成されていて、読者を意図的に迷わせる力があります。特に「明晰夢」を軸にした構造と、後半のサーカスから桃色の象へ至る流れは圧巻です。不穏さと美しさが同時に立ち上がります。言葉選びも非常に豊かで、比喩や漢語の使い方に確かな個性があります。読み手を選ぶ文体ではありますが、その分、強い世界観を確立しています。終盤の溺水と警察の場面で一気に現実へ引き戻す構成も効果的です。読後に解釈が揺れ続ける、印象の残る作品だと思います。
もっと見る