概要
出会いは昨年の冬。近所の公園。ブランコの鎖がきしきしと悲鳴を上げ、風花が舞うひどく冷え込んだ日。
よれよれのタンクトップと短パンでしゃがみ込み、真剣な顔で砂山をこしらえているおじさんがいた。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!シュールな関係がはらむ癒やし
「おじさん」と「私」は現実の「生」から浮いている。どこかシュールで観念的な生き方をしている。
「私」は、人の気持ちが理解できない。フリーターとして生活。セックスで繋がれた人間関係のなかで生きて、妊娠するとお金だけもらって満足することにしていた。
一方、「おじさん」は、自分は宇宙人だといいながら、自分の内的世界で生きている。外見は、どこにでもいるようなありふれた中高年。薄い頭部には脂が目立ち、食いぎたないところがある。
「私」は「おじさん」と交流する。真夜中の缶蹴り。おじさんのマイペースながらやさしいセックス。二人でたべるいくら丼。その中で、「私」はやがて自分の抱えていたものの正体に気付かさ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!丼の上の、真っ赤な宙
ラブストーリーです。それも壮大な。
おそらく正直な方なのでしょうな。主人公は愛想笑いが全くできません。
しかし、正直者が生きやすい世の中なのかというと、決してそうではないようで……
周りと違うからという理由で粗雑に扱われ、いじめられ、
輪に入れない。そんな生き方をしてきたのだと思います。
そんな彼女の恋人は、
真冬に短パンとタンクトップを着て、砂場で遊ぶおじさんです。
彼は宇宙人なのだそうです。
缶蹴りが好きなのだそうですが、私の想像だと缶蹴りって二人ではできないと思うので、ただ単に空高く間を蹴り上げることなのではないのかな? と思います。
それとかくれんぼ、
あとは、いくら丼…続きを読む - ★★★ Excellent!!!僕は宇宙人、私も宇宙人
他人とは違う感性を持つ人は、時に差別や虐めの対象になる。
この作品の主人公の女も、その一人だ。
そして、宇宙人を名乗る45歳のおじさんも、そうなのかも知れない。真冬なのにヨレヨレのタンクトップに短パン。好きな事は、缶蹴り、かくれんぼ、いくら丼とセックス。
女は、その感性の特異性から、交わった男との間に出来た子どもを何人も堕してきた。二人がいくら丼を食べるシーンは、堕してきた命を象徴しているのか。
作者の鋏池さんお得意の擬音語がいくら丼を食べる時の咀嚼音に現れる。結構不快な音だが、どちらかというと醜いおじさんの見た目に合わせて絶妙なアクセントとなっていると感じた。感じ方は人それぞれだが。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!嫌悪感と没入感と、共感
真冬にタンクトップ一枚で砂場で遊んでいるおじさん。
ヨレヨレ、ブヨブヨ、ネタネタ。
「普通」だったら、目を合わさないように通り過ぎると思います。
しかし彼だったからこそ、主人公の彼女は心を開きます。
この「普通」という概念、ときに厄介なシロモノですね。
どこまでが正常で、どこからが異常なのか。
そんなことを気にして苦しくなるくらいなら、宇宙人とでも名乗ればいい。
いっそ完全な異物になって、世界を外から見てみればいい。
まあ……
実際にやってみると、失うものは多そうですが……
そこは小説のいいところ。
読むことで体験できます。
巧みな小道具や情景によって差し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!宇宙人と名乗るおじさん。流され続ける「私」の日々に彼は何をもたらすの?
痛みもあるけれどあたたかい。そんな不思議な魅力のある作品でした。
主人公は、「宇宙人の恋人がいる」と反芻する。
それは公園で出会った汚いおじさん。タンクトップ姿で過ごし、いくら丼を食べる時はねちゃねちゃと汚らしく食べる。
でも、そんなおじさんと一緒にいる時間に不思議と安らぎを覚えている。
主人公である「彼女」は「人間として生きる」のが下手らしく、これまで体目当ての男たちと何人も付き合い、妊娠してはその子供を堕胎するようなことも続けてきた。そしてそれを悪いとも変だとも考えて来なかった。
そんな彼女だったが「おじさん」と出会って一緒にいくら丼を食べることで、少しずつ「何か」が満…続きを読む