概要
しかし、伝統楽器ディジュリドゥの奏者兼職人である青年は、抜け殻を埋葬するどころか「いい音が鳴りそうだ」という狂気的なインスピレーションを抱く。彼はタカアシガニをディジュリドゥ【タカアシガニリドゥ】へと改造し始めてしまう。
虹色の大蛇はそれを死者への冒涜だと感じて妨害を試みるが、青年の創作意欲と、固定観念に囚われない人間の可能性に触れ、次第にその行いを見守るようになる。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!海底の夢を漂うSF文学。ソングラインを取り入れたセンスに感嘆。
かつてSF作家A・C・クラークは、イギリスからセイロン島(スリランカ)へ移住しました。深海に宇宙空間との類似性を見出していたことから、インド洋でのスキューバダイビングに惹かれたためだと言われています。
かくいうわけで果てなき宇宙の闇と同じぐらい、海中はSFと相性が良い。元祖はたぶんヴェルヌ『海底二万里』辺りからはじまると思うのですが、それこそクラークも『海底牧場』を書いていますし、マイクル・クライトン『スフィア』などもあります。映画ではやはりジェームズ・キャメロンの『アビス』『アバター』が外せないでしょう。
こちらの物語も夢の世界の光景ではありますが、海を描いた広義のSFです。雄大なイメージ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!そこにガラスがあるかは、ぶつかった者にしかわからないのだから。
カクコンに参戦された平手さんのエースの作品です。
「すばらしい」としか言いようのない力作です。
お話は、どちらかというと難解なのですが、人の生き方の方向性や魂の根源を問うような、哲学的な作品です。
タカアシガニの彼は、発達障害の方だったのか、現実世界ではすり減って死の直前にあったわけですが、神の意図と違う方向から息吹を吹き込まれ、精神的再生を達成します。
ディジュリドゥの彼は、神の意図を気づいていなかったわけですが、タカアシガニの彼を正しく導きました。結果的には正確に「彼がもっと輝く生き方」を見抜いていたとも言えます。
他者が見ても、その人の正しい在り方は分からない。
そし…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ショーケースで奏でられるその音は……。
光の届かぬ地の底。そこは海の底である。
やがてそこに、一頭のマッコウクジラの死骸が落ちてくる。
マッコウクジラの体から、真っ白な雪のような微粒子が、水面に向けて登ってゆく。
いわゆる、マリンスノウだ。
現実の雪とは違い、天に登って降っていく。まるで夢の中にいるような情景である。
その夢の世界で、誰かがタカアシガニとなったあなたに問いかける。
「なぜ、そこでじっとしているのか」と。
現実の世界では一人の職人が、楽器を作っている。
それは、巨大なツノをのようなものを奏でる、ディジュリドゥという管楽器である。
その職人は、タカアシガニの足を使ってその楽器を作らんとしていた。
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