軽口まじりの一人称で進んでいくのに、ふとした描写が妙に生々しくて、日常と怪異がずるっと地続きになる感じが好きです。友人の生活感のなさと主人公の世話焼きぶりが、笑っていいのか胸がざわつくのか判然としない温度で描かれていて、その横で“見えているもの”だけが別のレイヤーで進行しているのがじわじわ効いてきます。終始ゆるい会話と食べ物の描写で押し通しつつ、読後に「結局あれはなんだったのか」が頭から離れなくなる、後味の残り方が好みの一作でした。
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