多分、これは“恐怖”の物語ではない。優しくて奇妙な世界のお話。

物語の冒頭は、焦燥感を煽るにはややパンチにかけるもののじんわりと迫り来る恐怖を描いたシーンから。
まだ序盤ということもあり、ゆるゆるっと綴られる展開に若干の物足りなさを覚えるも、そこから更に読み進めていくと、思わず目を留めるシーンがあった。
『コックリさん』を友人たちと行う場面である。
ホラーもののモチーフとしては定番だと思っていたが、侮ることなかれ、これがなかなかスリリングで、序盤の緩やかさから突如として襲いかかるキレのある描写に、緩急の妙を感じてしまう。
ともすれば、そんなホラーものとして「あー面白かった」でそのまま素通りしてしまいそうな物語に、別の確度から奥行きを与えるのがその後の展開だろう。

ネタバレになるので詳しくは記載しないものの、不思議な読後感を与えてくれる区切りの付け方だと思った。
特に「現実」というひとつのキーワードについて、はたと立ち止まって考えさせられるような設定の展開はお見事。
ついレビューを書いてしまおう!と思ってしまうくらいだ。

物語はまだまだ序盤。このあとの展開に対する期待も込めて、★1つ(good!)を残していく。