ゲーム世代の青春の甘酸っぱさと未来の幸せが溢れてる

 高校での出会いからその後まで、女性から見てもとてもチャーミングな由美さんに鯨武(百式)さんが惚れ込んでいく様子がとても微笑ましく、なんと純粋な人なのだろうと思う。
 高校時代を思い返してみて、そうかあの頃男子たちはそんなことを考えていたのかと今更ながら感慨深くなる。
 そして、当時の話の間に現在の夫婦になってからの話が挟まれており、両者の目線から読める点&対比が様々な思考を呼び起こす。青春時代の失敗なんて気にするな、と思うし、歳を重ねるのも悪くない、と思わせてくれるポイントでもある。いま青春真っ只中で黒歴史を重ねて落ち込んでいる諸君にはぜひ読んで元気を取り戻して欲しいと思う。
 全編を通して、作者の温かい眼差しと愛妻の由美さんへの深い愛情に心が温められ、読後感が良い点も気に入っている。

 作者とは世代的にはかなり違うが、ゲームを通して鯨武(百式)さんの心が成長していく点にはとても共感した。当時、ゲームは「子どもを堕落させるもの」扱いで、大人が目の敵にして「一日〇時間まで」なんて制限が平気であって、ラスボスを目の前にして電源を切られたと翌朝泣いている同級生を良く慰めたものだ。
 しかし、ゲームだってラノベだって、その中からしっかり学べることはたくさんあるのに、大人はどうしてこうバカなのかと思ったものだ。真剣に取り組めば、人は何事からも成果を得ることをこの作品が見事に証明しているではないか。
 そして、ゲーセンも当時は「出入りなんてとんでもない」という風潮だったが、こんな楽しいデートもできるところなのだと初めて知った。
 いろんな発見と共に心が温かくなる秀作だ。ぜひ多くの人に読んで欲しいと思う。
 

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