その心は、草原を駆ける

一気に読み進めたので興奮冷めやらないまま筆をとる。
最初は『蒼き太陽の詩』の舞台たるアルヤ王国の外側の世界、なにより遺伝子レベルで大好きな遊牧民が出てくる物語ということで興味がひかれページをめくった。文字を追ううちに時間を忘れた。激流にのみこまれ、気付けば遠浅の湖の岸辺にたっていたような感覚。
根本的に価値観の違う部族がひとつの王国のなかへ吸い込まれていく。世界史を紐解けばどこにでも散らばっている場面。けれど私は今までそれを字面で追うだけで分かったつもりでいたのだと痛感した。この作品は、そこに血肉を与えて私へ訴えかけてきた。心の奥、根幹を揺さぶるような衝撃を与えた。草原の戦士の誇り、アルヤ側の言い分、部族の小競り合い。感じ方、考え方、生き方のぶつかりあいをこれでもかと書ききった作者様に心からの敬意を示す。(160828)

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