草原の狼の血を引く戦士の気高く力強い生き様がここにある

草原に生きる遊牧と戦の民、イゼカ族のもとに
近隣部族から書状を携えた使者がもたらされた。
「草原と境を接したアルヤ王国が草原の諸部族に
招撫の働き掛けを行っているが如何すべきか」と。

エザンは、かつてイゼカ族が戦を為していたころ、
最強の戦士として部族内外に勇名を轟かせていた。
平穏の続く現在となっては、彼を凌ぐ程の戦士は
イゼカ族の中に存在しないといえるかもしれない。

エザンはまた族長の信任も厚く、族長の子らにとって
第2の父であり、人生の師とも呼び得る存在だった。
ゆえに部族の存続を懸けて大国アルヤと対峙する今、
エザンは族長から最も気掛かりな次男坊を任される。

族長の次男坊ヤシェトは血気盛んな若者である。
しっかり者の長男坊と愛され上手の末っ子の間で、
荒ぶる己の気性と感情をうまく制御できないまま、
部族の中で爪弾きにされがちで、どうにも難しい。

ヤシェトを中心とする幾らかの問題がもとからあり、
そこへアルヤや周辺諸部族との関係性が絡んできて、
エザンはイゼカ族と己自身の在り方に問いを重ねる。
戦士として、年長者として、父として、如何に生きるか。

若い世代と親の世代との間で起こる葛藤が劇的に描かれ、
策略と行き違いの間で失われる多くの命に胸を抉られる。
エザンは、ヤシェトやその兄弟は幾つもの困難の果てに、
一体どんな結論を導き出し、どんな道をたどるのか。

草原の狼の血を引く戦士の気高く力強い生き様がここにある。

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