この問題作は、愛について問う人間ミステリー。

凄まじい。たくさんたくさん、粗い部分はあったりするのだけど、それでもやはりこの作品は凄まじい。

ザッピングのようにコロコロと切り替わる視点は、人を選ぶかもしれない。しかし、気付けば遠いところから始まったはずの物語が少しずつリンクしていく構成の妙が素晴らしく、読み進めていくうちに言い知れぬ快感を覚える。
キャラクター設定もお見事。ホームズとワトソンのように、名探偵には相棒が必要不可欠なわけだが、本作では相棒というよりも協力者ーー援助交際を行う少女とその“客”として描かれる。見方を変えると力関係が180度変わってしまう、歪な関係。その設定が私には十分奇抜に思えたし、新鮮だった。
また、その設定を活かした物語の展開もグッド。

ミステリーの肝は、そうしたプロットやトリックにある。
しかし、それはあくまでミステリーの一面でしかない。

本当に解かれるべき謎は、いつだってホワイダニットなのだ。
いつ、どこで、だれが、どのように。それらの謎も、もちろん気になる。犯人は誰だ。あぁ、気になるさ。
しかし、もしも身近な人が命を奪われたとき、真っ先に“どうして”という思いが先行するのではないか。
だからこそ、そういった動機の部分を濃密に描いたこの物語は凄まじいのだ。

この作品には大きく分けて二つのドラマがある。
一つは、そんなホワイダニットの真実をもがきながら模索する等身大の物語(ミステリー)。
そしてもう一つは、上記の物語の解答編に至るヒントでありながら、読者に対して、人が人を殺す心理について問いかけてくるもう一つのホワイダニット。

テーマ、ラストとあわせて、問題作であることは間違いない。

※一つだけ、作者様にお伝えしたいのですが、カクヨム記法を一部誤って認識されているかと。強調の点の入れ方、改めてご確認くださいませ。

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