甘、酸、鹹、辛、苦、あらゆる美味をちりばめたエンターテイメント満漢全席

 とある街の個人経営の中華料理店に無頼な青年が現れるところから本編は始まる。
 彼の働きで倒産、転売を免れた中華料理店、そこでは食を主体にした大小さまざま悲喜こもごものストーリーが展開される。

 若い女主人が従業員に懐く恋心、わがまま放題に育って母親を顧みない家庭問題。
 また、軽犯罪を娯楽のように楽しむ小心者、生前の罪、行いが斟酌されず地獄へ行く者、登場人物も様々だ。

 バラエティーに富んだ登場人物を書き分けストーリーを構築する。
 それはさながら料理という小宇宙を構築するのと同義なのではないか?

 茫洋とした(見た目だけに限る)青年はある問いを投げられ決断を下す。
 そこから生まれる「新たな言葉の料理」、是非味わい尽くしたいものだ。

その他のおすすめレビュー

星村哲生さんの他のおすすめレビュー475