最初は最近ありがちな題名のラノベなのかなぁと思い手を伸ばしてみた。
(書籍で読んだわけではないけど)
ところが読後に抱いた感想は一転し、なんと軽妙洒脱な物語!
作者の慧眼を思えば幅広い年齢層に訴えるための工夫に違いない。
作中の言葉遣いやテンポも心地良く、美しい景色や香りが活発な自販機の精の様子と相まって脳裏で再現され、読書中非常に楽しく、またノスタルジックな思いに浸れた。(終わりへ向かうのが寂しくなるほどに。)
何より特徴的なのが度々登場する詩だと思う、調べてみた所明治のものだとか。筆者の文学と神道の博識さに脱帽した。
【当たりのおまじない羨ましいな、自販機の精の詩と香り気になるなと思いました。
そして〽の記号にハマった。笑
無料で読めて良いのかと疑うほどのクオリティだったので是非書店で購入して手元に残しておきたいと思います。
次回作楽しみにしてます!】
彩り豊かに紡がれる、付喪神との恋物語。
いつまでも変わることのない彼女は少年にとって故郷の象徴だった――
目を引く一方で、一発ネタかと思ってしまう題名に、おそるおそる開くと美しい文体が飛び込んできた。私は小説を楽しむとき、想像したときの絵面の美しさが先に来ることが多い中で、この物語は聴覚に訴えてきた。
何気ない会話が、やりとりが、惚れてるのだと叩きつけてくる。
難攻不落にも見えたヒロイン、壁は高い中で老いることのなかった彼女にも変化が訪れる。結末は予想はついていたけど、それでも安堵と喜びでニヤリとしてしまう。
とりあえず想像してもらいたい、美人のお姉さんが自販機に花をまいている姿を。萌えてしまった人は読むべし
冒頭から引き込まれるように、最低限の文字で設定が記される。
そして、約7万文字ということもあってか、登場人物も主立っては主人公とヒロインの二人となる。
だが、この完成度はちょっと、ほかの投稿作品とは比較にならない
出版したり、賞をとった作品も含め。だ。
作者の詳細がプロフィールにあまりないし
このサイトの創設にあたって、角川から『お手本』として投稿されたプロの作品ではないだろうかと思う。
やおろずの神々や、宗教の専門知識も「素人はあまり知らない」が「わりかし一般的」なものを使用しているところや
詩によって、その場面を連想させる技術力など
ちょっと素人には表せない底力の深さを読んで感じた。
累計ではトップなのも頷ける。
むしろ、このレビューを書いた週間ランキングでは5位以内にこれがなかったことが驚いた程だ
今から物語を紡ぐ人は、ぜひ参考にするべき文法が沢山織り組まれている、プロの作品だ。
私自身、かなりひねくれた所があるので、所謂『人気作品』は敬遠がちなのだが。
この作品は、評価に値する、高評価作品であると実感する。
まず、タイトルが中々、混沌なのだが。
内容を読めば「なるほど、そうきたか。」と感じ取れる。
舞台は現代日本に近い感じを受けるが、自販機と、自販機の精のイメージが何となく、平成初期の空間を生み出しており、それが、読者の年齢によっては『恋心』に近いカタルシスを生んでいる。
また、ヒロインの自販機も、最近のこういった作品には珍しい、押しに弱い知的美人。なのが強みだと思う。こういったヒロインは現在ではあまり受けないようだが、正直、日本女性はこうでないと。という筆者の強いイメージが彼女の魅力をグイグイ引き出していた。この文法や表現は物書きにとって、かなり参考になるポイントだ。
最後は詩と、和傘の中で二人を隠す蜜時で、この作品は幕を閉じる。
その瞬間に「ああ、もう少し彼らの時間を見たかった。」と感じさせられたのは、カクヨムでは、この作品しか私は存じない。
少し、高校時代の夏の夜を思い出してしまった。