その不可思議な題名に騙されないでほしい。

私自身、かなりひねくれた所があるので、所謂『人気作品』は敬遠がちなのだが。
この作品は、評価に値する、高評価作品であると実感する。
まず、タイトルが中々、混沌なのだが。

内容を読めば「なるほど、そうきたか。」と感じ取れる。
舞台は現代日本に近い感じを受けるが、自販機と、自販機の精のイメージが何となく、平成初期の空間を生み出しており、それが、読者の年齢によっては『恋心』に近いカタルシスを生んでいる。

また、ヒロインの自販機も、最近のこういった作品には珍しい、押しに弱い知的美人。なのが強みだと思う。こういったヒロインは現在ではあまり受けないようだが、正直、日本女性はこうでないと。という筆者の強いイメージが彼女の魅力をグイグイ引き出していた。この文法や表現は物書きにとって、かなり参考になるポイントだ。

最後は詩と、和傘の中で二人を隠す蜜時で、この作品は幕を閉じる。
その瞬間に「ああ、もう少し彼らの時間を見たかった。」と感じさせられたのは、カクヨムでは、この作品しか私は存じない。

少し、高校時代の夏の夜を思い出してしまった。