同作者の『地球外知的生命体のための、地球人飼育マニュアル』に続けて、今作も読んでみたのですが、書き方や設定等が色々と異なっているとはいえ、全体的にテンポは良く、ある種の軽い読み口は共通しているといった感じでしょうか。とはいえ、話の軸はしっかりしており、伏線の張り方も上手く、ただ単に「軽い」だけではなく読み応えも結構感じられました。
ただ、その「軽さ」ゆえに、所々で現れるシリアスな面が若干「薄く」なってしまっている印象があります。特に、序盤においては、人が死ぬようなエピソードが「他人事」みたいな感じで片付けられているパターンが多く、どのように読んだらいいのか戸惑ってしまったところも(『地球人飼育マニュアル』は、あくまで「マニュアル」という体裁を取っていたのでそこまで気になりませんでしたが)。まあ、おそらく「あえて」そんな風に書いたと思われるので、そういった「ノリ」をどう捉えるかによって、評価が変わってくる作品かもしれません。
一見どころか中身的にも無気力な主人公が待つ第二ゲートでは、いつものように問題児がやってきます。これは、そんな問題児たちと関わる主人公のハートフル(レス?)な物語です。
こちらの常識を一切知らないはた迷惑な異世界人。
あちらの旅行を楽しんできた不注意な帰還者さん。
様々な事情や考え方でやってくる彼らはどうにか入界審査を通ろうとしてきますが、そこは心も冷静。態度も冷静。我らが主人公による、微塵も動じない事務的検査で、バッタバッタと処理されていきます。
はじめは面白可笑しく、ドタバタ劇を見ている感覚なのですが、次第にいくつかの糸が絡まってひとつの物語として進んで行きます。
そこには出会いと別れもあって……。
無感情主人公は幸せを掴むことが出来るのか。どうしてここまで無感情になってしまったのか。
スピンオフのようなおまけまでついた豪勢なお話を、どうかお楽しみください!!
カクヨムオフィシャルの企画「落選作品の選評コーナー」で、紹介作品全ての中で最高得点を叩き出していた本作。
やはり、出版のプロの選評だけあって、かなり、読み応えがある作品だった。
まず、きちんと伏線の回収が済み、物語がしっかりと終わっているのは勿論だが。会話文のユニークさや、読者のイメージを邪魔しないように、敢えて書いていない所など、文章に対してのテクニックも垣間見える。
恐らくどこか他の公募でも、三次とか後ろの選考まで残る作品力だと思う。勿論、受賞の可能性もある。と言う意味合いでだ。
私には特に、媚びた様な下ネタや、極端なグロテスクな表現も無かったと思うのだが。中盤から、その日常が、非日常に切り替わった場所の伏線が若干弱く感じたか。
更に、サービス精神たっぷりの「アナザーエンド」まで書いて、ゴッドさん氏の、この作品への愛着が伺えたのがとてもよかった。
本編のアナザーエンディングまで読んでの評価になります。
異世界に住むキャラクター達をこちら側の世界からとことん冷静に見つめたユニークなお話です。
冷静に見つめる視点の持ち主は、何事にも動じない、常に表情も変わらない、何が起こっても無気力そうな若い男の審査官。
彼の業務は異世界とこちらの世界を繋ぐ門を通して入界してくる異世界の住人達を審査することです。
しかし、彼の担当する2番ゲートにやってくるのは何故か厄介な入界者たちばかり。
常識の通じない彼らにも全く動じることなく笑えるくらい冷静に対応する彼と、対照的な濃いキャラクターの入界者たちの攻防がとても面白く描かれています(時々エグい場面もありますが…)
けれども、そんなドタバタだけでは終わらないのがこの物語の魅力でもあります。
ある時入界審査で出会った異世界人のとある女性と関わることで、審査官の彼の運命はあらぬ方向へと大きく動いていきます。
そこには彼の運命を導く「門」の力が働いているようでした。
無表情で冷静すぎる彼、彼の面倒を見つつ彼を利用する先輩、彼をコネ入社だと敵視する同期さん、彼と関わることで自らの人生を大きく変えたあの女性…。
登場人物それぞれに背景があり、読み進めていくうちにそれらが明らかになっていくため、ページをタップする手が止まらなくなります。
クスリと笑いながら、運命の悪戯に涙しながら、あなたも異世界と人間界の狭間に立って楽しんでみてください♪
各エピソードに登場する異世界の訪問者たちが、ことごとく可笑しすぎます。愉快(?)な訪問者たちと、ストイックな生真面目さで向かい合う主人公が、これまた可笑しすぎて、ついつい読む手が止まりません。
話が進むにつれて、主人公と異世界の住人達との滑稽なやり取りの中に、不思議と「リアル」を感じるようになります。両者の考え方の違い、いいかげんな情報から生まれる誤解、違う価値観を持つ者だからこそ気が付く真理…。これは、現実世界での異文化交流の現場そのものではないか。考え方の違う人間同士が出会った現場そのものではないか。そう思い至ると、この作品のキャラ達にさらなる親近感を覚えずにはいられません。
可笑しさ全開のエピソードの中にも、さりげない伏線が織り込まれ、終盤に向けてリアリティに富んだ深い展開が用意されている点には、ただただ「お見事!」と嘆息してしまいました。
第7話まで読んでのレビューです
異世界と現実世界をつなぐゲート、その入国審査官の日常(というには波乱ばかりなのですが)その活躍というか冷静な仕事ぶりを楽しむ物語です。
この物語の特徴はなんといっても主人公のキャラクターでしょう。何があっても動じないし、ほとんど感情すらないように思える、そんな彼がたまに見せる人間らしさに妙に感動してしまう。
次々と問題を起こす人外がやってきては、色仕掛けで迫って見たり、蹴散らされたりと、とにかくユーモアたっぷりに話が進んでいきます。その乾いた笑いのセンスが素晴らしい。
さて最新話では少し日常に変化が現れようとしています。読み始めるなら今!更新を楽しみに待ちましょう。