最後の一文でひっくり返す。そんな衝撃が毎ページごとにあり、読者を全く飽きさせません。
群像劇のミステリーは、下手をするとお話が破綻する諸刃の剣でもあると思うのですが、この作品はまったく破綻がありません。
複雑に入り組んだ人間模様、展開、謎……。それらが1つでも紐解かれた時、言い様のない快感に襲われます。うさぎ強盗というか作者さんの技量というか、手の平の上で転がされまくりです。しかしその手玉に取られるのも楽しい。術中に完全にハマってますね。
完結後に読むべきだったかもしれません。しかし連載途中でもこれほどの完成度なのですから、どんなオチになるか期待して追いかけたいと思います。
※6月23日追記
第1回 カクヨムWeb小説コンテストミステリー部門受賞、おめでとうございます!受賞するのも納得の作品でしたので、書籍が出たら必ず買います!
――いかにしてこの状況は出来上がったのか?
このミステリにおいての謎はこれだと私は考えていました。
泥棒たち、組織の青年、そして死体。
過去と現在それぞれがパズルのように配置されたエピソードの欠片たち。
視点と視点が重なり合い、謎が広がりながらも次第に謎の真相に近づいていく。
そんなミルフィーユのような構成の見事さには唸らされました。
ほぼ全編通して悪党しか出てこないキャラクター造形は小気味良く、
暗躍する「うさぎ強盗」の動機が語られた瞬間、
そこまできてなにゆえか「してやられた」と思いました。
うさぎ強盗はさわやかだ!
この人はここから更にもっと面白いものを投下してくれるのではないかと思うので、
ぜひとも今後も書き続けてもらいたいものです。
ところでこの世でミステリーを読むにあたって、結末や犯人を把握したあと、
伏線やミスリードに改めて気付きに行くという楽しみがありますね。
……
ええ、はい。もう一度うさぎ強盗の世界に行ってこようと思います。
それでは!
本作が優れているのはまずタイトルの秀逸さ。個人的には「兵隊やくざ」「ジョン、全裸連盟へ行く」に匹敵する。このタイトルだけで読む人間が倍は違うと言える。
そしてうさぎというファンシーなイメージにだまされてはいけない。ましてやうさぎ強盗を英訳したrobber rabbitの響きがロジャー・ラビットに似ているからなんていうあなたはすでに死んでいる。うさぎのなかには素早い動きで襲いかかり、鋭い牙で人間の首を噛み千切るヤツもいるのだ。油断して殺されないように備えとして、事前に『銀河ヒッチハイクガイド』「パルプ・フィクション」「SHERLOCKシーズン3第1話」なんかを確認しておくといいかもしれない。ただし、うさぎ強盗の鮮やかな手並みに殺されてみるのも悪くはないだろう。
本作は2回目を読みたくなる内容だ。そうしなければ真に本作を読解したと自信を持てなくなる。2回目にはあらゆる場面が1回目の印象と変化していることだろう。それを確認したくてたまらない。だが慌てる必要はない。本作が書籍化されれば、確実に再読することになる。書店で『うさぎ泥棒には死んでもらう』のタイトルを見かけたら、あなたは手に取らざるをえない。あなたはすでにうさぎ泥棒の術中にはまっているのだ。
たくさんの物語が一つの結末につながっていく。
うさぎ強盗とは誰なのか?
篠原の行く末は?
読者がその謎を解くためには、すべての文を登場人物を疑ってかからなければならない。
「うさぎ強盗には死んでもらう」はそんなハラハラドキドキな群像劇です。
もちろん、謎を解くだけでなくストーリーを追うだけでも十分に楽しめます。
群像劇ならではの読了後の爽快感や、うさぎ強盗などの魅力的なキャラクター。
物語冒頭、プロローグのうさぎ強盗についてのインタビューなど、読者を引き込む工夫が満載です。
ぜひ、プロローグだけでも読んでみては?
頁をめくる手を止められず、楽しめること間違いなしですよ!
正直、「いやいや、騙されないでしょ」と思いながら読んでいました。「ははーん。やっぱりそう来るのね」とか、「予想通り……!」とか、ちょっと勝ち誇った気にもなっていました。
けれど、それも途中まで。
(エピローグより前の)最後の罠に見事に引っ掛かってしまいました。「うっわ、やられた……!」と、たぶん口に出して呟いてましたね。これも唐間ネロさんの作戦のうちだったのでしょう。引っ掛からないつもりでいたのに、気付けばうまく誘導されていて、最後には大きな落とし穴に落ちてしまう。嵌りました! 二重の意味で!
もう一度読みたいと思わされる、そんな素敵な作品です。
是非ご一読を! いや、一読と言わず、何読でも!